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【識者の眼】「早期緩和ケア外来全国調査」西 智弘

No.5108 (2022年03月19日発行) P.60

西 智弘 (川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)

登録日: 2022-03-10

最終更新日: 2022-03-10

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本連載4回目に、私は「早期緩和ケアの行き詰まり」というテーマで原稿を書いた。

その際、「現実として、国や学会としては早期からの緩和ケアを推奨し続けているにもかかわらず、国内の緩和ケア専門機関では、他院で抗がん治療中の患者が通院できるための緩和ケア外来を設置していない場合も多い。病院によっては、自院の患者に対しても緩和ケア外来を設置していない場合もある。これでは到底、早期からの緩和ケアを実践できる体制になっているとはいえない」と書いたのだが、これは事実なのか?

それを確かめるべく、今年1月、緩和ケア病棟を有する全国457施設に対し、「診断時からの緩和ケア」を実施する外来を設置しているかどうかについて調査票を送付した。返ってきた調査票をみての感想は、「思っていた以上に、早期緩和ケア外来を開設している施設は多い」だった。2月までで219施設(48%)から回答があり、167施設(37%)で「診断時からの緩和ケア」の実践が行われていることが明らかとなった。また、追加で457施設のWebサイトに公開されている情報を加えると、合わせて209施設(46%)で早期からの緩和ケア外来を実施していた。また、このうち「他院に抗がん治療で通院中でも、緩和ケアは地元で受けられる」体制を提供している施設は138(30%)に上ったのである。

この数値をどう考えるかは人それぞれだろう。地域による偏りもある。ただ、逆に言えば未回答の施設でも実際には実践しているところもあるだろうし、また今回調査対象となった施設以外の、がん拠点病院や診療所でも、早期からの緩和ケアを実践している施設もあるだろう。その意味では、「早期からの緩和ケアにつながりたくてもつながれない」と嘆くほどの状況では実際にはないのではないか、とも言える。

つまり、これまで問題だったのは適切に情報が公開されていない、そしてその情報が患者・家族、そしてがん治療をする医師たちにも届いていなかった(届かせようとしていなかった)ということだったのだろう。今回、上記調査結果をもとに、「早期からの緩和ケア外来Web」にて情報公開を開始した。今後も、情報の追加・更新を行っていく予定である。この情報が適切なところに届き、一人でも多くの方の助けになれば幸いである。

【参考】

▶早期からの緩和ケア外来. https://pluscarekanwa.jimdofree.com/

西 智弘(川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)[緩和ケア]

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