No.5109 (2022年03月26日発行) P.60
松村真司 (松村医院院長)
登録日: 2022-03-14
最終更新日: 2022-03-14
2月に入って各地でピークアウトの声も聞かれるものの、特に都市部においては新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はこれまでにない規模で継続している。感染性がより高いとされるオミクロン株亜種の市中感染も各地で報告され、今後の動向について楽観的になるにはまだ早い、というのが現場の医療者の本音であろう。
指定感染症であるCOVID-19に関する報告義務は十分に理解しており、当院でも診断確定後の速やかな届出を心がけている。「時代遅れ」と批判された保健所へのFAX報告は、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)へ移行し、即時の届出とその後の感染者の経過フォローなどに活用している。また、主として行政から依頼される他の報告作業の多くはE-mailやウェブ入力を利用した電子報告が主流となり、以前と比べてこのような報告業務に関して格段に効率化が進んでいるのは実感するところである。
しかし、矢継ぎ早に打ち出される種々の施策と比例して、対応にあたる医療機関に課される報告業務は増加の一途を続けている。東京都に位置する診断・検査機関である当院を例にとると、思いつくだけでも日々のHER-SYSの入力、都への検査実施状況・結果報告、医療機関等情報支援システム(G-MIS)の日次・週次報告、自宅療養者への健康観察等支援事業の実績報告、ワクチン接種状況の日々の報告、経口治療薬の投薬実績入力作業があり、さらにこれ以外にも行政から定期的に届く報告要請や種々の調査の求めに応じている。当院ではオンライン診療は限定的な実施に留めているが、これらを拡大した場合は付随してさらに業務が増加するだろう。
これらの報告には重複する項目も含まれ、そもそも必要性に疑問符をつけたくなる調査や報告依頼も少なくない。たとえばHER-SYSには正確なワクチン接種日や内容の入力が求められているが、接種日を正確に記憶している人は少なく、本人に確認した上で後日入力するという作業が必要になる。入力項目が多くなれば誤入力のリスクも増える。感染者数が増加すれば報告数は増え、ただでさえ疲弊した現場にさらに追い打ちをかけることになる。ギリギリの状況で踏みとどまっている医療職の士気が下がることで、損失を被るのは国民である。国民一丸となってこの感染症に立ち向かっている今こそ、現場に過重な負担を与えているこれらの報告業務について見直し、整理することは喫緊の課題ではないだろうか。
松村真司(松村医院院長)[新型コロナウイルス感染症][報告業務]