No.5112 (2022年04月16日発行) P.64
島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)
登録日: 2022-03-24
最終更新日: 2022-03-24
私たちは、私たちの病院の理念を達成するためにいくつかの基本方針を定めている。そのうちの最初の2項目は、他病院と同様に、①「根拠に基づく安全で質の高いチーム医療を行います」、②「患者及び家族の皆様が、納得し満足できるように、寄り添って支援します」と謳っている。
①は、Evidence Based Medicineであり、医師、看護師、医療技術系職員は、卒前卒後、生涯を通して当然取り組むべき職業的使命ととらえている。一方、②は、Narrative Based Medicineであり、患者個々の物語りを聴き取り、読み解くことが求められる。すべての医療者が①と②の両者を追求すべきであるが、その比重は職種によって微妙に異なっており、それらを統合するためにチーム医療がある。そのチーム医療を実践するときの行動指針が3つ目の項目である。すなわち、③「職員同士が自発的、主体的に対話し協働する関係性を作っていきます」。
様々に変化する外的、内的環境に対応して持続的に発展するためには、トップダウンのみならずボトムアップが効果的に作用する組織運営が最も理想的である。上司・部下・同僚・他職種間の職員同士が繋がることができる関係性を如何に構築するか。それは、「対話:コミュニケーション」のありようと表裏一体である。私たちの病院では、数年間コーチング型コミュニケーションの実践的研修を導入しており、これまで全職員の1/3程度が参加した。私自身、研修を受けて、自分が話すこと8割、聴くこと2割であることに気づき、聴くこと8割、話すこと2割に変身すべく努力している。そして、相手のことに関心を持ち、相手を承認していることを示し、自分がどう見えるかを相手にフィードバックしてもらうように努めている。
医療は、対患者、医療者間のチーム医療など、すべて人と人の関係性の上に築かれている業種である以上、特に医師において、「コミュニケーション学」は必修科目といっても良いのではないだろうか。
島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[チーム医療][コミュニケーション][コーチング]