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【識者の眼】「COVID-19罹患後のスキューバダイビングについて」水野泰孝

No.5115 (2022年05月07日発行) P.57

水野泰孝 (グローバルヘルスケアクリニック院長)

登録日: 2022-04-04

最終更新日: 2022-04-04

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した人たちの中で、罹患前にスキューバダイビングをされていた方から、いつから復帰してよいのか相談を受ける機会が増加しています。私自身もスキューバダイバーかつインストラクターであり、日本海洋レジャー安全・振興協会が運営しているDAN JAPAN(Divers Alert Network Japan)1)の協力医療機関(DD NET)に登録していることと、潜水医学の知識があり、COVID-19診療経験を併せ持つ医師や施設が国内にきわめて少ないという背景があるのかもしれません。

日本高気圧環境・潜水医学会によるCOVID-19関連情報2)(2020.5.28) によれば「①検査陽性の無症状感染者は少なくとも1カ月間待機して潜水再開前には医師の評価を受ける、②症状のある感染者は少なくとも3カ月間待機して潜水再開前には医師の評価を受け、必要に応じた検査項目としては、胸部CT検査、呼吸機能検査、運動負荷検査、心エコー検査」と明記されています。DAN EuropeのMedical teamによるガイドライン3)(2022.2)によれば「①検査陽性の無症状ダイバーは陰性になってから少なくとも30日待機して承認を受けるべき、②有症状者は検査陰性になってから30日間待機し、さらに30日間無症状であることを確認してから専門医による承認を受けるべき、③入院したダイバーは専門医の承認を受けるのに少なくとも3カ月待機すべきであり、この承認には肺機能検査、運動負荷試験、CTによる肺炎の治癒が含まれ、心臓に異常があった場合は心エコーおよび運動負荷試験で正常心機能であることを確認するべき」と明記されています。

実際に私もこの指針に準じて受診したダイバーのCOVID-19発症時期、呼吸器症状や入院の有無を問診し、最低でも罹患1カ月後以降の再開指示、さらに万全を期するのであれば胸部CT検査を提案し、現存しているかもしれない肺炎の有無を確認するようにしています。肺炎で入院歴のあった方は所見が数カ月にわたり残存することもあり、許可するまでに時間がかかることもありますが、最近のオミクロン株流行以降では肺炎を合併する方は少なく、無症状や呼吸器症状のない方がほとんどであることから、1カ月程度の療養期間後に減圧リスクを伴わない潜水計画を立てるように指導した上で診断書を発行するようにしています。

【文献】

1)DAN JAPANホームページ. https://www.danjapan.gr.jp/ 

2)「with コロナ」下での潜水再開に向けての準備. 日本高気圧環境・潜水医学会ホームページ.

   https://www.jshm.net/file/covid19_0528.pdf 

3)What You Should Know About Diving After Covid-19. DAN Europe Foundation.

   https://alertdiver.eu/en_US/articles/what-you-should-know-about-diving-after-covid-19

水野泰孝(グローバルヘルスケアクリニック院長)[新型コロナウイルス感染症][潜水医学・減圧症]

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