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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:敗血症」徳田安春

No.5116 (2022年05月14日発行) P.62

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2022-04-21

最終更新日: 2022-04-21

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先日、ある病院で、80代女性、主訴が急性発症の発熱、悪寒戦慄、残尿感、排尿困難、頻脈、頻呼吸のケースに遭遇した。新研修医に診断仮説を考えてもらうという教育機会だった。私は、敗血症という診断仮説が必ず挙がってくるだろうと期待していた。

医学部を卒業したばかりの新研修医は、医師国家試験用の知識をピークに有する集団である。彼女ら彼らの仮説には尿路感染症は含まれていたが、尿路感染症に伴う「敗血症」との発言は少なかった。それはなぜか?

敗血症は、全身性炎症反応症候群(SIRS)を伴う感染症と定義されている。2016年、Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)とquick Sequential Organ Failure Assessment(qSOFA)が推奨された。qSOFAスコアはSOFAスコアを基に簡略化したスコアで、集中治療室(ICU)以外の診療科ではSOFAよりも精度が高いとされ、qSOFA 2点以上が敗血症を疑う基準とされた。

新研修医たちが敗血症を考慮しなかったのは、国試対策本や国試ビデオでは、qSOFAが2点以上で敗血症を疑え、という暗記スタイルの教育をしていたからなのだ。もちろん、国試対策リソース作成会社に罪はない。

一方、以前から用いられていたSIRSスコアは感度が高いが特異度が低いと低評価扱いとされた。また、英国の入院患者臨床評価ツールであるNational Early Warning Score(NEWS)も英国では使用推奨されている(図 1表 1〜2)。

しかし、最近発表されたメタ分析では、qSOFAは特異度が最も高かったが感度が最も低かった。SIRSは感度が最も高く、特異度が最も低く、NEWSは感度と特異度の両方が中程度だった1)。これらを表 3に示す。


臨床現場でのスクリーニングの原則は高感度ツールの利用だ。その意味でqSOFAの感度0.46は問題と考える。半数以上は見逃すことを意味する数値であり、あまりにもリスクが高い数値だ。

検査前確率も大切だ。悪寒戦慄があるだけで菌血症の可能性は高いことがわかっている2)。検査前確率も考慮したスコアを推奨すべきだろう。

【文献】

1)Wang C, et al:PLoS ONE. 2022;17(4):e0266755.

2)Tokuda Y, et al:Am J Med. 2005;118(12):1417.


徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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