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【識者の眼】「まずは非オミクロン株、アルファ株やデルタ株遺伝子型系統のSARS-CoV-2によるCOVID-19の根絶をめざしたい」西條政幸

No.5116 (2022年05月14日発行) P.57

西條政幸 (札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2022-04-22

最終更新日: 2022-04-22

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札幌市の今冬の降雪量は記録的に多かった。北海道外と北海道を結ぶフライトの運航や道内の電車やバスなど公的輸送機関の運行が麻痺する日が多く、それに加えてSARS-CoV-2オミクロン株による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行(便宜的に第6波という)の拡大も続き、気が滅入る日が続いた。

2021年4月以降、21年4月〜7月中旬までのSARS-CoV-2アルファ株によるCOVID-19流行第4波、同年7月〜11月初旬までのSARS-CoV-2デルタ株による第5波、そして22年1月からのオミクロン株による第6波を経験した。第6波の流行は今も続いている。札幌市の第4波、第5波、第6波(22年1月〜3月31日まで)のCOVID-19患者総数は、それぞれ約1万3700人、1万1200人、8万3300人であり、死亡者数(致命率)はそれぞれ約480人(約3.5%)、約30人(約0.3%)、約190人(約0.2%)であった。第5波で亡くなられた約30名の患者の多くは高齢かつワクチン未接種の方であった。COVID-19ワクチンの重症予防効果がきわめて高いことを示している。第5波が終息した21年11月と12月には新規患者数が激減し、0(ゼロ)の日もあった。この事実は重症化予防効果だけでなく、COVID-19ワクチンの発症予防効果もきわめて高いことを示唆する。

第6波のCOVID-19患者の致命率の低さは、COVID-19ワクチンにオミクロン株によるCOVID-19発症や重症化を一定の割合で予防する効果が認められることと、オミクロン株の相対的病原性の低下によると考えられる。

本連載でCOVID-19の根絶をめざすべきであるということを考察した(No.5110)。札幌市におけるCOVID-19流行の原因となっているSARS-CoV-2遺伝子型は、2022年1月中旬以降、オミクロン株だけであり、デルタ株、アルファ株あるいはその遺伝子型に繋がるSARS-CoV-2は検出されていない。現時点ではきわめて病原性の高いデルタ株系統の遺伝子型SARS-CoV-2は検出されない状況と言える。デルタ株系統のSARS-CoV-2が検出されない状況を維持させるには、定期的にワクチンを接種し、その接種率を長期にわたり高く維持することが必要である。

私はSARS-CoV-2オミクロン株を根絶させる前に、まずは病原性のきわめて高い武漢株・デルタ株系統のSARS-CoV-2を根絶させることを目標に据えるのがよいと考える。そのためには、オミクロン株により有効なワクチンを開発して接種を進めることに加えて、漢株・デルタ株系統のSARS-CoV-2に有効なワクチンの接種を、その根絶が確認されるまで維持することが重要と考えている。

西條政幸(札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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