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【識者の眼】「人々のつながりに関する基礎調査を読む」西 智弘

No.5118 (2022年05月28日発行) P.60

西 智弘 (川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)

登録日: 2022-04-26

最終更新日: 2022-04-26

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2022年4月、内閣官房孤独・孤立対策担当室から「人々のつながりに関する基礎調査(令和3年)」の結果が発表された。政府の「骨太の方針2021」の中で、孤立・孤独対策は重要課題のひとつとして位置づけられ、また医療の文脈においても孤立・孤独が寿命を短くするというメタアナリシスが発表されてきたことで、関心が高まっている。

この調査は、全国の16歳以上の2万人を対象として行われ、孤独や孤立に対する事項、またそれらが年齢や性別、収入などといった社会的属性とどのように関連しているかを調べたものである。

結果として、約60%に相当する1.2万人から回答があり、データが解析された。性別はやや女性が多いもののほぼ同数、ただ年齢については16〜19歳、80歳以上は全体から比較すると数が少なく、この層についてはデータにやや偏りがあるかもしれない、と注意して読む必要がある。

そして孤独の状況として、「UCLA孤独感尺度」に基づく孤独感スコアのほうを読んでみると、「常に孤独を感じる」「時々孤独を感じる」の2つを合わせて全体で約40%の方が孤独を感じていた、という結果であった。また、年齢別の孤独感を見てみると、孤独を感じていた方が最も多いのは30代、次いで20代であり、「年寄りの一人暮らしとかで孤独を感じている人が多そう」という世間一般的にありがちな予想は覆される結果となっている。男性と女性との比較では、男女とも孤独の比率は変わらず、配偶者や同居人がいるほうが孤独感は低くなっている。また興味深いことに、「未婚」と「離別」では孤独感が高まる一方で、「死別」については「既婚」と孤独感に差が無いという結果であった。

また「同居していない家族や友人たちとのコミュニケーションがまったくない」方々が感じていた孤独感よりも、「同居している人たちとのコミュニケーションがまったくない」方々のほうが孤独感がい、という結果もあり、配偶者や同居人がいた場合、その方々で頻回にコミュニケーションが取られているなら、その孤独感は高くならないが、同居人がいても何らかの要因でコミュニケーションが阻害されていれば、人はより孤独をめてしまう、ということが見て取れる。ここから「孤独とは、人と人同士がつながる自由の阻害である」のではないかと筆者は考えている。

紙幅の関係上、あまり多くを述べることはできないが、貴重なデータであるのでぜひ一度結果をご覧いただきたい。

西 智弘(川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)[孤独・孤立][コミュニケーション]

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