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【識者の眼】「2022年度診療報酬改定─通院・在宅精神療法料の指定医要件に関して」志津雄一郎

No.5117 (2022年05月21日発行) P.68

志津雄一郎 (志津クリニック院長、千葉県精神神経科診療所協会会長)

登録日: 2022-05-09

最終更新日: 2022-05-09

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2022年度診療報酬改定では外来精神医療の通院・在宅精神療法料(以下、通精)に対して、精神保健指定医(以下、指定医)と非指定医との点数に格差がつけられ、非指定医の点数が低く抑えられた。

本来、精神保健福祉法による指定医の定義は、強制入院における人権擁護を目的として厚生労働大臣が指定する資格である(入院における人権擁護資格)。よって、外来精神医療は人権を侵害しないため、指定医を通精に適応するのは、精神保健福祉法との整合性に無理があると思われる。

しかし、外来精神医療に対しても人権を重視すべきという考えが、指定医要件の拡大解釈につながった可能性もある。また同時に、増大する通精の算定に対する総量規制もあるだろう。

通精算定に関しては、その27%が非精神科医の算定であることから、精神科における指定医、非指定医のみならず、非精神科医への対応も検討すべきと考える。

精神科医療を十分に経験していない医師が、通精を算定していいのであろうか。日本の医療は自由標榜制のため、これは可能ではあるが、診療報酬では、指導料を他科の医師が算定できないようにしている事例もある。小児科、耳鼻咽喉科及び皮膚科では、その科の指導料算定に関して「同一医師が当該保険医療機関が標榜する他の診療科を併せて担当している場合にあっては算定できない」と記載されている。

通精に対しても、この一文を載せるだけで正当な算定を行うことができ、改定毎の減点を抑止することができる。

精神障害者の幸福のためには、外来精神医療の充実が必要であり、それには手厚い診療報酬が必要である。これ以上の通精の減点は絶対に阻止しなければならないと考える。

志津雄一郎(志津クリニック院長、千葉県精神神経科診療所協会会長)[外来精神医療]

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