No.5121 (2022年06月18日発行) P.63
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2022-06-03
最終更新日: 2022-06-03
2年半に及ぶコロナ禍の経験から、私たちの生活様式は大いに変わった。三密を避けるためには非接触、遠隔、さらにはバーチャルが基本であるからだ。「コロナ様」と崇めてもいいくらいに加速度的に未来へ進んだ。
打ち合わせ、会議、講演、取材、対談はもとより、懇親会や海外旅行もオンラインで可能となった。コロナ前には、1〜2時間の政府や病院団体などの審議会や会議に、時間をかけ、体力と経費を消耗して上京してきたことを振り返れば、夢のような世界だ。今更、元には戻れない。
このような時代と価値観の中で、医療だけが遠隔を忌避するわけにはいかない。遠隔医療と言っても、遠隔画像診断や病理診断などのようにこれまでも行ってきたもの、進みつつあるもの、そして今後のイノベーションが期待できるものなど、その裾野はきわめて広い。
さらに医療のプロセスは相談、診断、診療からなる。まず、情報を収集し患者の訴えや悩みを聞くことや他の医師との症例検討などで相談(コンサルテーション)する。次にそれを基に臨床所見をとり、臨床推論を駆使して診断をする。さらに、その診断を基に治療することによって診療となる。
これらのプロセスごとの可能性を探る必要があろう。すなわち、そのプロセスで医師〜医師間(D to D)、医師〜患者間(D to P)があり、こればかりではなく、在宅や現場の患者の傍らにいる医師や看護師と遠隔の医師間(D to P with D/Ns)もありうる。さらには、D to P with Robot/AIなどの可能性もすぐそこに来ていると思われる。
このように俯瞰すると、単に「オンライン診療」と十把一絡げの話ではない。また、診療報酬になじむ分野とそうではない分野も存在する。特に相談は自費が可能な部分であり、この分野におけるビジネスチャンスに多くの企業からも注目が集まる。イノベーションを図りながら、質を担保し、不法行為・非倫理的行為に対する処罰規定の早急な整備も求められる。
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[非接触][遠隔][バーチャル]