No.5122 (2022年06月25日発行) P.57
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
登録日: 2022-06-14
最終更新日: 2022-06-14
2022年6月8日の厚生労働省のアドバイザリーボード資料にて、「“効果的かつ負担の少ない”医療・介護場面における感染対策」(資料3-8)が示された1)。筆者も作成に関わらせていただいた。
この文書をぜひ参照して、医療・介護現場における感染対策の見直しに役立てていただきたい。たとえば、身体密着がなく、体液・排泄物を浴びる可能性が低い場合にはエプロンやガウンを使用しなくてもよい、フェイスシールドは無症状者への対応については必要ない、といったことや、オミクロン株の出現に伴い厳しい対応となっている面会の再開に向けての記載がある。また、外来での対応については新型コロナウイルスの疑い患者さんでもインフルエンザ流行時に準じた対応ということで、通常の診療への移行も支持している。
接触感染対策として手洗いは引き続き重要であるが、環境の消毒については止める方向性が示されている。米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention)においても、新型コロナウイルスで汚染された表面から新たな感染を実質的に起こしているわけではないとしている2)。
文書のタイトルは、「医療・介護」とされているが、公共の場所や職場などの対策においても参考にすることができる。医療・介護という公共の場所よりもやや感染リスクが高めのところで感染対策を止めるという対応は、公共の場所や職場での感染対策の緩和の議論にも活用できる。
公共の場所や職場での感染対策が改訂されていない背景には、業界団体などが作成しているガイドラインが改訂されていないことがある。以前は、所管する省庁などから具体的な表記の指導もあったようだが、最近では、より自主的なものになりつつあるようだ。ぜひとも、業界団体でも、専門家を交えてガイドラインについて見直しをしていただきたい。
自治体が示している感染対策についても見直したい。たとえば、飲食店の認証に関わる基準や、旅行を促進するプランにおいてワクチン接種記録を提示しなければ使えないなど、目的などが不明確なまま厳しい対応が求められていることがある。
なお、感染対策を緩めるまたは止める際には、今後、感染状況が悪化しても事業を継続できるということを考慮して検討していただきたい。
【文献】
1)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000948595.pdf
2)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]