No.5125 (2022年07月16日発行) P.64
武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)
登録日: 2022-06-24
最終更新日: 2022-06-23
「看護職員の数さえいればよい急性期病院だ」という誤った思想が長い間病院の機能を誤解させてきたことが、2022年度診療報酬改定で、ものの見事に解消された。
急性期充実体制加算の新設は、全国の自称急性期病院に混乱と競争をもたらした。病院内の改革を緊急にやり遂げなければならない状況になったことから、4月から必死の病院が目立っている。当然病院は、どのような特殊な治療が可能か、またその治療実績、各科の手術件数や地域貢献度など、正に地域における病院の存在感と信頼度を自他ともに評価する病棟機能基準を明示すべきである。
しかし今までは、7対1、10対1、さらには5対1など看護職員の数だけで、技術や知識を一切問わないという病棟機能基準だったため、これに猛烈な違和感を世の中の医師は持っていただろう。医療の主体である医師のレベルや、手術・難しい医療技術の必要な治療の実施などの機能はほとんど無視され、看護職員の数だけで病棟機能が決定されていた。私は看護職員の数さえいれば病棟機能の大半が決定され、高額報酬が約束されることに対する違和感をずっと持ち続けていたが、今回の改定は、その違和感を見事に打ち崩してくれた。
病院でありながら医師の能力の集中に対しての報酬でなく、単に看護職員の数だけで病棟機能を評価することを今の今まで継続してきた理由は何なのだろう。今回の改定を契機に、病院とは医学と医術を集中する場であり、そのレベルと多寡により病院が評価されるという、ごくまっとうな時代に成長してくれることを望みたい。
さらに大きく評価したいことは、総合入院体制加算の病院だけでなく、急性期充実体制加算算定病院に精神疾患と異常分娩への対応や、地域における感染症対策の中心的役割を担うことを求め、新興感染症の発生時には感染症患者を受け入れなければならない感染対策向上加算1の届出を要請したことであろう。要するに地域住民のあらゆる病状や急変に対応できるという病院を地域に配置し、地域住民を安心させるという見事な改定であった。これからの日本の病院は医療技術を中心に評価される、当然の姿に変貌してゆくことだろう。
武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[診療報酬改定][急性期充実体制加算]