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【識者の眼】「日本人の健康食品ブームは祭り好きの影響?」大野 智

No.5126 (2022年07月23日発行) P.60

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2022-07-04

最終更新日: 2022-07-04

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「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損」

ご存知の通り徳島の阿波踊り歌の出だしである。健康食品をはじめとした補完代替療法の利用状況について定点観測していると、健康ブームの流行り廃りは、日本人のお祭り好きが影響しているのではないかと感じることがある。

最近の例で言えば、Yakult1000(Y1000)がテレビやSNS等で話題となり、商品の供給が追いつかない状況にまでなっている。なおYakult1000は機能性表示食品であり、「ストレス緩和」「睡眠の質向上」「腸内環境改善」が謳われている1)。だが、実際に購入したことがある人に目的やきっかけを聞いてみると以下のような回答だった。

「話題になっていたから」

「SNSの投稿ネタとして」

「これまで飲んでいたYakultと飲み比べしてみたい」

バイアスがかかった情報とはいえ、機能性表示食品の趣旨に則って利用している人は皆無であり、ちょっと祭りに参加してみたといった趣である。実は、筆者も先日コンビニに寄った際、珍しくY1000が並んでいたので、ついつい購入してしまった。マーケティング的には「希少性の原理」が働いた故の結果と説明ができるかもしれないが、まさに「踊らにゃ損損」と祭りに参加してしまったわけである。

記憶を頼りにした話になるが、これまでにお祭り騒ぎのように注目を浴びた食品は、カスピ海ヨーグルト、ココア、納豆、バナナ、オートミール、スムージー、サバ缶など枚挙にいとまがない。長い目で見ると、健康ブームに乗ることで多種多様な食品を摂取することにつながるのであれば、日本人の祭り好きは、あながち悪いことではないのかもしれない。しかし、テレビの健康番組で紹介された「白インゲン豆」「にがり」による健康被害が社会問題化したケースもある。過去の連載記事(No.5015)でも取り上げたが、補完代替療法を利用する、つまり祭りに参加する際、「健康被害」「経済被害」「機会損失」がないことが前提条件であることは忘れてはならない。

補足:筆者と株式会社ヤクルトとの間に開示すべき利益相反はない。

【文献】

1)Yakult1000・Y1000公式サイト. https://www.yakult.co.jp/yakult1000/

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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