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【識者の眼】「少子化を考える」栗谷義樹

No.5132 (2022年09月03日発行) P.58

栗谷義樹 (山形県酒田市病院機構理事長)

登録日: 2022-07-27

最終更新日: 2022-07-27

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厚生労働省は1人の女性が生涯に産む子ども数の推計値、合計特殊出生率が6年連続で低下し、2021年は1.30だったと発表した。

少子化は、経済縮小、社会保障制度崩壊につながりかねない深刻な状況で、国は対応として、こども家庭庁の設置や不妊治療の保険適用、保育受け皿整備など種々の対応をしてはいる。しかしその一方で、未婚化、晩婚化の流れは止まらず、2020年現在で、50歳時の未婚率は男性で28.3%、女性で17.8%に達しているという。

先日、さる大学のお二人の先生が当院に見えられ、産後ケアなどについて、ご教示を頂く機会があった。

その時に聞いた話だが、ブラジルでは私生児が産まれると、女性の一族郎党の誰かが必ず赤ん坊を引き取り、自分の家の子として育てるのだという。日本のように私生児をむことが恥という意識はなく、分け隔てなく一族が大切に育てる社会通念が機能していることにとても感動させられた。

一方、勤務されている女子大では、パートナーは欲しいと思っているが、結婚は考えていない学生が当節は多いのだそうだ。未婚化、晩婚化の背景には、若者の結婚に対するこれまでは少数派だった考えの一般化、多数化があり、日本人の種としての未来と国の存亡そのものに直結している、なにやら終末的な匂いが漂う。 

産後ケアも母子保健もお産があってこそのものだが、その前に子どもを産み育てることへのスタンスが、この数十年間の間に取り返しのつかない状況に立ち至ってしまったのではないかと危惧されるのだ。

地域医療連携推進法人・日本海ヘルスケアネットには、本年4月、医療圏で唯一の「特定不妊治療費助成制度の認定施設」として不妊治療を専門に行う「すこやかレディースクリニック」が参加した。日本海総合病院においても、同クリニックと連携協働しながら、不妊治療外来の施設整備を計画しているところである。

不妊治療のみならず、地方の少子化に少しでも役割を果たす拠点に育っていってくれることを、願ってやまない。

栗谷義樹(山形県酒田市病院機構理事長)[不妊治療外来]

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