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【識者の眼】「子どもを増やすことが日本が今一番取り組まなければならない政策ではないですか」武久洋三

No.5132 (2022年09月03日発行) P.59

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2022-08-16

最終更新日: 2022-08-16

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2021年に生まれた日本の新生児数は81万人でした。2015年までは年間100万人以上生まれていましたが、生まれる日本人の数はどんどん減っているのです。日本にとってこのことが一大事ではないでしょうか。1975年に合計特殊出生率が2.0を切り、そこからどんどん減り続け、2020年は1.33でした。ということで、人口が1億人を切るのは2055年頃であると推測されています。人口がどんどん減る国が繁栄することはありません。今現在、日本で生活している私たちがこの日本の一大事を何とかしないといけないと思うのが普通です。では、政府はどうしているのでしょうか。日本の国が一大事の時に子どもを産むのは「それぞれの夫婦で考え通りになさってください」でいいのでしょうか。国は子どもを産みやすい環境に変えていくために何とかしなくていいのでしょうか。

2022年4月から、不妊治療に対して一部保険適応されました。今まで保険適応が認められてなかったのです。子どもが欲しい夫婦は何百万円もかけていろいろ努力し、やっと子どもを授かったのです。しかし遅すぎたとはいえ、一部でも保険適応になったことは素晴らしいことです。

保険は病気にしか使えませんが、不妊は明らかに病気です。健康であれば生理的には女性は妊娠できるのに、どうして今まで不妊治療に対する保険適応が認められなかったのでしょうか。日本は予算の使い方を間違っているのではないでしょうか。逆にいえば、今まで認められていなかった不妊治療の保険適応を今回の診療報酬改定でよく認めてくれたものです。

これを契機に一気に日本の衰退を防ぐために、子どもを産むことに日本の予算を使いませんか。子どもを産むための費用は当然、国の予算ですべて支給すべきでしょう。今は若い人たちが子どもを持ちたくなるように予算をどんどん使うべきです。

子どもがどんどん少なくなり、高齢者がどんどん増えています。少ない子どもで多くの高齢者を支える世界から、多くの若者が高齢者を支える世界に変えることが政権の絶対的目標ではないでしょうか。子どもが生まれたら税金でお祝いをする。子どもをつくるための費用はすべて無料。生まれた子どもを国が関与してどんどん教育して、成人したら日本のために頑張ってもらいませんか。国の予算の使い方を大きく見直しませんか。日本人出生対策に向かって考えていきましょう。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[少子化政策]

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