No.5135 (2022年09月24日発行) P.56
野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)
登録日: 2022-08-31
最終更新日: 2022-08-31
厚生労働省の指導により、勤務医の労働時間制限、いわゆる「働き方改革」が2024年度から義務付けられることは多くの医師が周知のことと思います。これにより、時間外勤務時間が制限され、長時間連続勤務も制限され、また、勤務と勤務の間のインターバルも一定時間以上が義務付けられます。この勤務時間には、主な勤務先以外の勤務先での労働時間、いわゆる外勤の勤務時間も含まれます。労働管理としては大変、よく考えられていると思います。認められている時間外労働の制限は、一般の労働者に比べますとかなり緩く、これに加え、地域医療暫定特例水準や集中的技能向上水準など、さらに時間外労働制限時間が長くできる区分もあります。しかし、それでも、働き続けてきた勤務医にとりましては今までよりは労働時間が短くなると思われます。
この勤務時間の制限によりできた勤時間は、ぜひ、有効に活用していただきたいものです。ご家庭をお持ちの方は家庭運営に多くの時間を割いて素晴らしい次世代を育成していただけるといいと思います。
先日、大学の1、2年生の病院見学の指導をいたしました。私の勤務先の大学生ですが、まだ、医学の勉強を開始していない教養学部の若い学生さんたちです。高学年になり、カリキュラムとして病院実習に来る学生さんを日頃から指導しておりますが、もう実習に慣れてしまったのか、積極性が感じられず、出席のためだけに来ているように感じられる学生さんもいるように思います。しかし、今回いらした、若い学生さんたちはやる気満々でした。
この学生さんたちと少し「働き方改革」が導入されていく話をしました。私は、「働き方改革」が施行されるので、外科も長時間労働というイメージではなく選択できる科になる、というつもりでお話ししたのですが、学生さんたちは「もっと働きたいのに」「もっと勉強したいのに」という実に賞賛すべき考えでした。このやる気を持続させてほしいものですが、確かに私もかつてはこんな学生でした。
まだ家庭運営という仕事を担わない人生のステージの時は、もっと自己研鑽したい人もいます。今回の「働き方改革」の内容では、時間外に臨床以外の仕事に従事する時にはこれを勤務時間には入れなくていいようです。やる気があり、体力もあり、自己研鑽に励みたい将来有望な医師には、勤務時間以外の時間を医学研究に充てたらいいのではないかと提案いたします。これにて、昨今の日本の医学研究の衰退をも回復できる可能性があるのではないかと考える次第です。
野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[医師の働き方改革]