No.5137 (2022年10月08日発行) P.60
草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)
登録日: 2022-09-27
最終更新日: 2022-09-27
コロナ第7波も収束に至りつつある現在、パンデミック下での事業運営の難しさを痛感している。8〜9月にかけて、北海道家庭医療学センター傘下の診療所3箇所で医師、看護師、医事などを含むクラスター感染が発生した。
都市型の在宅診療所では医師6名体制の中で4名が感染し、通常の外来を電話診療・オンライン診療に切り替えるとともに、一部の在宅診療も電話で対応する体制とした。稼働が可能な2名は急な在宅患者の体調悪化に備えつつ、できる範囲での診療を提供する役割を担い、緊張感のある数日を過ごすこととなった。
郡部の有床診療所では、入院患者から病棟の看護師や患者に感染が拡大。同様に、病棟診療に従事する医師にも感染が広がってしまった。重症患者を基幹病院に搬送するとともに、比較的軽症の患者はそのまま診療する体制を整備。保健所とも相談し、感染しているが無症状の看護師に感染患者の看護を依頼せざるをえない状況ともなった。
最後に、郡部の在宅診療所では、医師、看護師が一部感染したことに加えて医事職員が全員感染することとなり、診療は可能だが会計ができない事態になった。やむをえず、残った医師・看護師が受付から会計を担いつつ対応する体制をとって、外部からの支援までしのぐこととなった。
いずれも感染拡大時の対応としてBCP(事業継続計画)を策定していたこともあり、比較的スムーズに臨時の診療体制に移行することができたことが大きかったが、それでもある特定の職種がすべて感染するなど、想定を超えた部分もあった。様々な可能性を考慮したBCP策定は不可欠であるが、それに加えて仕事をある程度シェアすることがリスク回避につながることを実感したのも大きな経験となった。
パンデミックだけでなく、自然災害などに職員が巻き込まれることも無いわけではない。地域の健康を守る重要インフラであることを常に自覚しながら、今後も危機管理を徹底することが必要ということも、このコロナ禍で我々が得た貴重な教訓であろう。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療][新型コロナウイルス感染症]