厚生労働省は12月2日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会に、2022年9月取引分を対象に行った薬価調査の速報値を報告した。それによると薬価と市場実勢価格の平均乖離率は約7.0%となり、前回調査と比べると0.6ポイント縮小したことがわかった。23年度の中間年薬価改定を巡っては、診療側や関係業界が、医薬品の原材料費の高騰や安定供給問題を踏まえた特例的な対応を求めている。だが、薬価調査結果を受けて支払側は、平均乖離率、妥結率ともほぼ例年並みの水準であり、特例的な対応は不要との認識を示した。
投与形態別の平均乖離率は、▶内服薬8.2%(前回調査時8.8%)、▶注射薬5.0%(5.6%)、▶外用薬8.0%(7.9%)、▶歯科用薬剤マイナス4.3%(マイナス2.4%)。後発医薬品の数量シェアは前回調査時と同じ約79.0%、価格交渉の妥結率は94.1%(94.1%)だった。
薬価調査結果について支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「通常の薬価改定が可能というデータが示されたのではないか」、「特別に配慮すべき事情があるとまでは言えないのではないか」などと発言。今後予定されている関係業界のヒアリングで、特例的な対応が必要なエビデンスの提示など、納得できる説明がなかった場合は前回の中間年改定の内容を踏まえて、改定実施に踏み切るべきだと主張した。
診療側は改めて特例的な対応の必要性を強調。また長島公之委員(日本医師会常任理事)は、原材料費の高騰や安定供給問題など、これまでにない課題が山積する中での6年連続の薬価引き下げは、医薬品の提供に致命的なダメージを与える可能性があると危惧し、改定対象品目の範囲について、「21年度の(中間年改定の)対象範囲をそのまま踏襲することに合理的根拠はなく、現状に即した判断が必要だ」と述べた。
改定対象品目の範囲について支払側は「乖離率」でなく「乖離額」も考慮に入れるよう求めているが、乖離額に着目して品目を選定すると、単価が高い新薬や希少疾病用医薬品などに大きな影響が出ることが厚生労働省の提出資料で判明。このため診療側はイノベーションの評価や国民の医薬品へのアクセス確保に支障が出る恐れがあると反対姿勢を示した。