No.5152 (2023年01月21日発行) P.57
草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)
登録日: 2022-12-26
最終更新日: 2022-12-26
前回(No.5145)は、11月の日本医師会及び全世代型社会保障構築会議(以下、全社会議)の提言について触れた。それらを受ける形で、厚生労働省の社会保障審議会医療部会にて、かかりつけ医に関する検討が急ピッチでなされ、12月23日の会議で一定の方向性が提示された。
「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」という表現で提示された文章はコロナ禍でのかかりつけ医のあり方にはふれることなく、高齢化と人口減少という従来からの社会課題に対応する医療制度改革の一部として提示された。その結果、「国民・患者はそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を選択して利用することとし、医療機関は地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、自らが担うかかりつけ医機能の内容を強化する」という今までの政府方針とあまり変化のない内容に薄まってしまった。全社会議からの後退は明らかで大変残念である。
ただ、医療機能情報提供制度の刷新という文脈で「かかりつけ医機能」の法定化と情報提供項目の見直しと全国統一公表のシステムの道筋は示された。そして、「かかりつけ医機能報告制度」の創設によって、地域ごとに必要なかかりつけ医機能の充実・強化が必要とされた。その文脈の中で、「研修の量的・質的充実と受講の促進」「在宅医療の拠点整備」「地域医療連系推進法人の設立活用」「PHR基盤の整備」「対象者については慢性疾患を有する高齢者のみならず、子供を含め幅広く対象へ」「患者と医師の関係は1対1に」など留意すべき意見が併記されている。総論には新味がないが、こうした意見をどれくらい取り入れるかで、地域のプライマリ・ケア機能を真に強化する展開も考えられなくはない点が今回の提言の救いと言って良いだろう。
スケジュールとして、年明け早々の速やかな関係法令の改正、そして23年度における情報提供項目の見直しも含めた制度の詳細の検討、24年度の全国一律での医療機能情報の公表、25年度の地域の協議の場における「かかりつけ医機能」に関する議論という道筋も示された。ポイントは23年度の制度の詳細検討にある。私どもプライマリ・ケアを専門とする学会も、そうした議論に学術的な立場から大いに貢献できれば、と考えている。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]