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【識者の眼】「家族全員がコロナ陽性に」野村幸世

No.5152 (2023年01月21日発行) P.61

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2022-12-28

最終更新日: 2022-12-27

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年末になり、家族中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した。下の子が通う小学校から、喉が痛いと言っていると電話があり、私も仕事を辞して家に帰り、子どもが帰ってくるのを待ち構えて抗原検査をすると陽性である。自分は症状がないので、濃厚接触者かと思い連絡などを始めたが、もしやと思って自分も抗原検査をしたところ陽性であった。中学生の上の子も調べたところ陽性である。上の子は数日前から鼻水が出ていたそうで、どうもこちらが震源のようだ。本人はまったくコロナとは思っていなかったそうで、こうなっては防護策も何もない。主人のみが当初、陰性であったが、その後、陽性になってしまった。幸い、皆、ワクチンを打っているせいか重症化する者はなく、無事に自宅療養している。下の子のみ発熱や喉の痛みなどの症状を伴っているが、年齢ゆえに1人だけオミクロン対応のワクチンを受けられていないためかもしれない。

子どもを持つようになってからというもの、子どもの世話というのはかなりのエフォートを要するものである。これは多くの人が想像可能であろう。また、子どもが大人に比べると病気にかかりがちで、子どもが病気になるとその看病や、病気の間の保育など大変であろうことも良識ある人なら想像可能であろう。これに加え、子どもからの病気の感染という大変さが加わることは、子育てを経験した者でないと恐らくわかりにくい。子どもから感染する感冒というのはなぜか症状はかなり強烈で、子どもは大した症状ではないのに、これが感染した親はひどい目にあう。子育て中の勤務者を持つ上長はこのことも認識して頂くとありがたい。

話はやや変わるが、COVID-19に罹患し、自宅療養していることを登録すると、私が住んでいる東京都では、自宅療養のための食物の援助を自宅に送ってくれる。大きな段ボールが2つも届き驚いたが、この中身が実によく考えられていると思った。レトルトのご飯、缶詰、カレー、スパゲティとソース、お菓子、ゼリー、野菜ジュース、ふりかけ、豆乳、お茶、まだまだある。カレーは喉が痛くても食べられるような味わいのものであり、入っているパックの数も家族の人数をよく考えてある。これを考えてくれた人はきっと普段、台所仕事をしている人なのだろうな、と感謝の気持ちでいっぱいである。弱った時には助けてもらった人への感謝の気持ちも、その逆も、普段よりも増長されるものである。

私は消化器外科、中でも胃癌を専門とする医師である。胃の術後には特に食べ物の食べ方には工夫が必要となる。術後の年余にわたり外来で経過観察をする医師が台所仕事をする医師かどうかは患者さんにとっても大きな違いであろう。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[子育て中の勤務者][台所仕事をする医師]

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