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【識者の眼】「今の日本にふさわしい治療環境に」武久洋三

No.5157 (2023年02月25日発行) P.63

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2023-02-06

最終更新日: 2023-02-06

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いよいよ来年は医療介護同時改定が行われる。政府は2015年から日本の病床を15万床減らすことを決めている。確かに人口も減少しているし、もともと日本は病院での入院期間が長いから短縮の必要性を考えると当然であろう。何より現在、急性期病床は30%以上が空床なのだ。

戦後80年近く経過し、今の日本の住環境は飛躍的に充実している。日本人はどこに住んでいても1人1部屋で生活している。しかし病院はというと、いまだに4〜6人部屋であり、一番肝心の病気を治す場が100年近くも変わっていないのだ。このことは為政者が、病室とは4〜6人部屋が当たり前で何の違和感も持っていないということなのだろう。しかし健康な状態では1人1部屋で生活しているのに、病気になって入院治療が必要になると、4〜6人の相部屋で過ごすことに対して、多くの人が何の違和感も持っていないことに驚く。

患者の高齢化が進み、今や急性期病院でも入院患者の大半を高齢者が占めている。治療も看護も介護ケアもひと昔前に比べて倍以上の手間がかかっているはずである。しかるに看護師数は法律ではほとんど増えていない。病棟では患者が夜中に何回もトイレに行くが、転倒するリスクを回避するため、患者の膀胱にバルーンカテーテルを挿入し、入れっぱなしにしているのだ。だから退院しても寝たきり状態となり、要介護者を次々と作り出しているのだ。普通ならスタッフの数を増やすべきだし、看護師だけでなく介護職員を多く配置し、夜間排尿にも直接介護職員がケアに当たるべきではないか。だから「急性期病院が要介護者を作っている」と大声で言われているのだ。

もうそろそろ目を覚まして、患者の病気を治すのに最適な環境を作りませんか、と言うべきではないか。国民は最適な環境で優秀な医療スタッフによる最適な治療を受けて最高の成果を得たいな!! と望んでいるはずなのに、医療を提供する側がそのような意識を持っていないのだ。

リハビリテーションもADLが低下し、歩けない状態になってから実施するより、入院直後から急性期病棟で要介護状態にならないための予防リハビリテーションを実施できるように、リハビリテーション療法士を配置すべきである。

どうして日本の医療はこんな風になってしまったのか。新薬を開発することも医療技術を発展させることも重要ではあるが、それよりも何よりも医療にとって一番大切な部分が抜け落ちていると思いませんか?

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[入院患者の療養環境]

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