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【識者の眼】「能登半島地震への初動対応」草場鉄周

No.5207 (2024年02月10日発行) P.54

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2024-01-26

最終更新日: 2024-01-26

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正月の日本を直撃した能登半島地震。1月といえば、私が大学1年生のときに発災した阪神・淡路大震災が想起されるが、今回もこの寒さ厳しい時期に、地理的に孤立した地域に大変な地震が起きてしまった。プライマリ・ケア連合学会は発災直後から現地の関係者を通じて情報収集を進めていたが、すぐに単独で現地に入れる状況ではないことも明らかになり、まずは学会HPにて震災関連の情報を集約したサイトを構築する指針を固めた。

その上で、〈令和6年能登半島地震支援プロジェクト〉を設置し、常設している災害医療システム委員会が主導して活動することを決定。議論の結果、輪島で診療所を運営している学会員の小浦友行先生が市の保健医療福祉調整本部に地元医師会代表として入っておられることをふまえ、小浦先生を外部からサポートする体制を整える方針となった。現在、富山大学の総合診療グループからの支援をロジスティック面で支援するために、富山に支援物資を送る準備をしている。また、プロジェクトリーダーの原田奈穂子先生が石川県庁の保健医療福祉調整本部に出席し、関連団体と情報交換し、DMATとも協力、調整しつつ活動を行っていくことを確認したところである。

学会では東日本大震災、熊本地震などで被災地支援の一端を担ってきた経験があるが、そこで得た教訓は非常に多い。支援と言えば、避難所を巡回したり、取り残された在宅患者を訪問したりして医療介護支援を行うイメージが強いが、個人や小組織がバラバラに現地に入って動こうとすると、支援の重複や物資の偏在などが生じてしまい、今必要な地域に支援が届かないという全体の誤謬が起きやすい。そのため、情報を都道府県などに集約し、支援団体が足並みをそろえて適材適所の支援を提供することが不可欠である。そのコーディネートを行うことは簡単ではなく、災害支援の論理を理解し、関係団体と調整する知識や技術が欠かせない。こうしたコーディネート機能を担う人材を育成するプロジェクトを今年度立ち上げ、今年2月にトライアルの研修会を開催するタイミングでの今回の震災であった。もう1年早くスタートできていればと悔やまれる。

とは言え、今後も南海トラフ地震など日本を取り巻く地震災害への潜在的リスクは非常に高い。災害大国日本のプライマリ・ケアを牽引する組織としては、今後も将来への備えを怠らず、まず足もとの能登半島地震でもできる限りの支援を提供していきたい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療

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