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【識者の眼】「勤務環境が変われば自分も変わる」野村幸世

No.5217 (2024年04月20日発行) P.64

野村幸世 (星薬科大学医療薬学教授)

登録日: 2024-04-03

最終更新日: 2024-04-03

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個人的なことではあるが、私はこの3月をもって東京大学の常勤は退任した。母校であり、長い年月を過ごしたところであるが、自分が過去にローテートした職場を考えると、東京大学は決して自分にとって働きやすい職場ではなかったと思う。理由を考えると色々な要因はあった。中でも直近の上長との価値観の相違は大きかったように思う。

先日、私の退任記念も兼ねて、私が30代の頃に大学院生としてお世話になった国立がんセンター研究所支所(現:国立がん研究センター臨床開発センター)の研究グループのメンバーでの集まりがあった。同窓会のような集まりに参加して、その時代の自分に戻ることは多くの方が経験されていることかと思う。私もこの集まりでは、当時の自分に戻って、頭の冴えを感じることができた。その結果、翌日の仕事の効率も、ここのところのそれと比較して大幅にアップしたことを感じた。やはり価値観が近い人々と交流できると、自己肯定感につながるのだろう。

人にはそれぞれ価値観があり、合う職場、合わない職場があるのだと思う。仕事をしている以上、100%合う職場を探すということもむずかしいことなのではないかと思う。また、合っていたかどうかは、辞めてから気づくことが多く、そこで働いているときには必死であり、合っていないと考えることもむずかしい。自分に関して言えば、合わないときには自分が合わせようと努力をしているように思う。この合わせようという努力が過ぎると、人は鬱になったり、仕事の効率が落ちたりするのではないか。かと言って、少し合わないからと職場を変えていては、職場ショッピングではないが、転職をしすぎる信用のおけない人というレッテルが貼られてしまう可能性はある。

どのような「合わない」レベルまで、自分を職場に合わせる努力をし、どのようなレベルからは転職を考えるかは難しい判断だと思う。体や心が不調になったら転職のサインかもしれないが、体や心に不調が出る程度も、個々人によって差があるような気がする。

解答が得られる話ではないと思う。いずれにしても、自由度が高く、転職ができる環境が好ましいのではないかと思う。そのほうが職場の質の自由競争も成り立つはずである。旧態然とした、抜けることや、途中から入ることの難しい医局という体制は変わっていってほしいものである。それには、個人に付随する業績や経歴が正当に評価されることが必要条件であると思う。

野村幸世(星薬科大学医療薬学教授)[価値観[職場][正当な評価]

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