序文
コモンな疾患を深く,しっかりと勉強したこと,教えられたことは少ないのではないだろうか?
自らの診療を省みると,診断困難例や複雑な症例,めずらしい症例はしっかりと勉強するが,コモンな疾患は耳学問や,指導医の診療方法から学び,そのまま実践していることが多いと気づいた。ところがその方法では日常診療がマンネリ化し,患者ごとに対応する柔軟性に欠けると思い,コモンな疾患ほどよく調べ,勉強することを始めた。
すると,それが実に面白い。診療に広がりと深みが生まれ,また日常診療にも余裕ができ始めた。今まで気づかなかったコモン疾患の特徴に気づくことができるようになり,当然コモン疾患に隠れた致命的な疾患,稀な疾患にも気づく機会は増えたと思う。
稀な疾患や診断困難例の診療は,病院総合診療医にとってやりがいを感じる瞬間である。ただ,そのような疾患は多くはない。一方でコモンな疾患は常に診療する機会があり,その分知識を活かす機会も多い。
今回執筆のお話をいただいたとき,巷には稀な疾患や診断困難例を集めた本が多く出版されていたが,そこであえてコモンな疾患を掘り下げるような本を執筆したいと思った。
この本を通じて,総合診療医や若手の先生方に,コモン疾患を掘り下げるやりがいと面白さを感じて頂ければ幸いである。
最後に,この本を出版するに際して,多大にお世話になりました日本医事新報社の方々にお礼を申し上げたい。
2016年8 月
高岸勝繁