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【識者の眼】「現今の経済力からみる社会保障費の将来」栗谷義樹

No.5218 (2024年04月27日発行) P.57

栗谷義樹 (地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)

登録日: 2024-04-08

最終更新日: 2024-04-08

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3月27日の外為市場円相場が対1ドル151円97銭に下落し、1990年7月以来、34年ぶりの円安と大きく報道されている。年初から4.3%の下落、経済紙は低金利の円から資金が流れる円安ではなく、円に資金が集まらない円弱時代に入ったのではという。

一方、2010年までは日本の経常収支黒字の中心は貿易黒字だったが、その後は国内製造業の競争力衰退や事業所の海外移転などで貿易収支の赤字が増え、近年の経常収支は輸出ではなく海外投資収支が黒字の中心として支えているという。ただ、海外投資に伴った収益は海外で再投資されることが多く日本には戻っていない。

我々の関連する医療分野で言えば、医薬品・医療材料はデジタル関連と並ぶ貿易赤字の一大項目の1つだ。実際に当山形県酒田市病院機構日本海総合病院の本年2月までの通期材料費は前年比10.1%増、5億8500万円ほど増加し、うち医薬品は14.1%増となった。入院患者数3.2%増を割り引いてもこの数年の増加傾向が止まらない。

戦後経済大国への発展からその後の大衰退と縮小の30年が過ぎ、わが国はこれから我々戦後団塊世代がこの世を去る時期に差しかかろうとしている。2001年6月から策定が始まった「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)ではその第1弾に、「社会保障が長期にわたり経済の伸び以上に拡大を続けるのは事実上不可能」との一文がある。

社会保障費は23年度予算ベースで134.3兆円、25年度には140兆円と見込まれているそうだが、それ以降は人口の最も多い団塊世代が後期高齢者になり、介護費用も膨らんでいく。後期高齢者医療制度も21年度1人当たり医療費は前年度比2.6%増の94万1000円、制度導入時(08年度)から9%増えた。1人当たり介護費も20年度で08年度比26%増加した。

今回の日銀の円安対応、マイナス金利からの政策変更は国債費の利払いを増やすことになるが、今後も膨張する社会保障費を賄う予算編成は急速に難しくなっていく。22年度の健保組合平均保険料率は解散ライン目前の9.3%と過去最高だったというが、このままではさらなる保険料率改定と社会保障費全般の効率化、伸び抑制は早晩セットで不可避の時代に入る。

とりわけ医療は社会保障費効率化の本丸と目されており、今回の同時改定でも医療提供体制の本格的な効率化に舵を切った気配を感じる。国民皆保険に守られ、費用の不安なく国民すべてが先進諸国の標準治療を享受できた良き時代は早晩、過去のものになるのかもしれない。杞憂であることを切に望む。

栗谷義樹(地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)[円安][貿易赤字][国債利払い]

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