「ジェンダーギャップ指数」は世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する男女格差の評価指数で、6月に2024年版が公表されました。日本は146カ国中118位で、昨年の125位からは改善しましたが、依然として先進国の中ではぶっちぎりの最下位です。
「なぜ低いのか」を考察するには、この指数が何をもとに算出されているのか、の確認が重要です。WEFの「ジェンダーギャップ指数」は「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で男女格差を評価し、「0」が完全不平等、「1」が完全平等。各分野の評価項目も特定の項目が取り上げられています。たとえば「健康」については、①出生時の男女比、②健康寿命の男女比─の2項目による評価で、いわゆる「日々の健康」は評価の対象となっていません。つまり、厳密に実態を評価できている指数ではないのですが、だからといって気にしなくてよいものではありません。
日本は「教育」と「健康」ではほぼ平等である一方、「経済」と「政治」で大きな格差があります。特に女性の管理職や議員の割合が低く、意思決定層に女性が少ない状態。ロザベス・モス・カンターの「黄金の3割」理論によると、意思決定層に女性が30%を超えて存在することで影響力が増し、女性が働きやすい環境が整うとされています。なお、Watariらの報告によると、日本の大学の医学部長と大学病院長は100%男性1)。
「ジェンダーギャップ指数」が算出されはじめた2006年以降、日本の指数の数値自体はほぼ変わっていないのですが、他国が格差解消に取り組む中で日本は順位を下げています。
単に数値目標の達成をめざすのではなく、実質的な平等のために、女性が正当に評価され、活躍できる環境を整える必要があり、そのためには、家庭での男女の役割分担の偏りや組織でのジェンダーへの先入観も並行して変わっていく必要があります。
一方で、日本のすべての組織がジェンダーギャップに満ちているわけではなく、業界や地域によってはギャップが少ないところもあり、ジェンダーフリーに生きることができる場所は存在します。医療においても、科ごとに状況は異なります。過去には大学入試の時点で不利益を被っていたこともありました。次世代のためにも、性別に関係なく各自の努力や実績が正当に評価される組織が増えていくことを願います。
【文献】
1) Watari T, et al:JAMA Netw Open. 2024;7(1):e2351526.
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[世界経済フォーラム][意思決定層][黄金の3割]