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【識者の眼】「公立病院経営強化プランに思う」栗谷義樹

No.5233 (2024年08月10日発行) P.64

栗谷義樹 (地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)

登録日: 2024-07-30

最終更新日: 2024-07-30

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病院事業を設置する地方公共団体は、「持続可能な地域医療体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」(総務省自治財政局長通知、2022年3月29日付)に基づき、2022年度または2023年度中に「公立病院経営強化プラン」(以下、強化プラン)を策定することが義務づけられている。現在各病院の強化プランがほぼ出そろい、公開されているところである。

筆者はときに病院の強化プランに対する意見を求められることがあるが、過疎高齢化、医療・介護の担い手不足、医療・介護需要の急激な縮小が今後に見込まれる地方において、持続可能な強化プランの作成は、きわめて困難になってきていると感じざるをえない。とりわけ、今回の強化プランは2024年度の診療報酬改定以前に策定作業をほぼ終えているものが多く、そのことも強化プランの評価を困難なものにしている。

診療報酬の今期改定は、背景に当面の地域医療構想目標年度(2025年度)における病床数、病床機能と機能分化を強く意識したものとなっているが、ポイントの1つに、高齢救急患者受け入れ病棟の新設(軽度救急患者)、地域包括医療病棟を地域の中小病院に新設(早期在宅復帰)がある。その狙いには生命の危険が少ない、在宅復帰が見込まれる軽度救急の高齢者を受け入れる専門病床の確保、地域包括医療病床の整備があり、このための病床機能が再規定されている。

その趣旨は理解できるが、今後急速に医療・介護需要が縮小していく地方の公的中小病院にとっては、診療報酬改定の今後の方向性をふまえた強化プランを病院単独で立案するにはきわめて困難な時代に入っている。地域包括医療病棟もこれまで抱えてきた業務との調整、必要なスタッフ確保などを考えると、その新設、維持は地方ではきわめて困難と言わざるをえない。

この課題解決のためには、より広域の医療圏全体で基幹病院と中小病院、介護事業所との垂直・水平連携、医療機関の再編統合、運営形態の変更など、広い範囲でのふみ込んだ地域デザインが必要で、中小病院の強化プランもこの視点で策定されないと持続的運営、経営はきわめて困難と感じている。

本来この作業は地域医療構想調整会議の役割と思うが、とりわけ病院の再編統合など政治問題化しやすいこともあり、現在までの調整会議による調整機能は、財源、医療政策、関連改定を見据えた地域全体の計画実現までには至っていないのが現実である。この状況と、最近になって地域医療連携推進法人設立が全国的に増える傾向にあることが、無関係ではないような気がしている。

栗谷義樹(地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)[医療・介護需要の縮小地域包括医療病棟地域医療構想調整会議

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