第1章　開業前に必ず押さえておきたい重要ポイント
第2章　問題スタッフではなく，長く働いてくれて戦力になるスタッフを採用できるコツ
第3章　開業後に失敗しないオープニングスタッフ採用から開業日までの準備事項
第4章　問題スタッフ，相次ぐ退職，残業代や賞与の請求……スタッフとのトラブル対処法と予防策
第5章　開業直後から大きな成果を出す組織をつくるスタッフマネジメント
付章　福利厚生充実のための企業型確定拠出年金のすすめ

プロローグ

本書を手に取って頂き，ありがとうございます。
税理士法人テラス代表の笠浪真と申します。
私は，これまで社労士法人テラスの亀井隆弘とともに，開業医の先生の質問・相談事例をまとめた『開業医の教科書^®』『開業医の教科書^®Q&A』を出版しました。この2冊はサブタイトルに「医院経営のヒト・モノ・カネ・情報」とあるように，医院経営の税務・労務・法務全般について幅広く書いた本です。おかげさまで，医院開業予定の勤務医の先生から医療法人理事長の先生に至るまで，多くの反響を頂きました。
多くの先生は医業収入や資金繰りなど「カネ」の問題だけでなく，求人採用やスタッフとの関係など「ヒト」の問題にも悩んでいます。前著の感想を送って頂いた方にも，スタッフとの関係や退職問題の悩みを打ち明ける先生が多くいらっしゃいました。
•医院開業することにしたので勤務先を円満に退職したい
•末永く働いてくれるオープニングスタッフを採用したい
•優秀なスタッフに内定辞退してほしくない
•スタッフの連鎖退職を防ぎたい
•スタッフの組織力を上げて医院経営を軌道に乗せたい
実際，顧問先の先生を訪問しても，「ヒト」の悩みについてお話される先生はとても多いです。肌感覚としては，「カネ」と「ヒト」の悩みは半々くらいです。また，私が主催する医院・クリニック専門の経営塾である「開業医の経営塾」（https://trc-tax.com/service/service-management/）でも，「ヒト」に関する悩みを持つ先生が多く参加されていました。
そこで，今回は医院開業予定の勤務医から，開業直後の先生を対象に，人事労務に特化したテーマで執筆することにしました。本書の構成は，第1～3章で医院開業準備中の労務，第4～5章では医院開業直後で多くの先生が悩まされる労務の問題を扱っています。当法人では，これまで100件以上の医院・クリニックの労務に関わってきたノウハウが蓄積されています。特に前著ではお伝えしきれなかった箇所を重点的に解説しました。
第1章では，医院開業に備えて，勤務先を円満に退職する重要ポイントや，開業前に知っておきたい労務の基礎知識について解説しています。開業検討中の先生は，まずは第1章から順番に読み進めて頂きたいと思います。また，経営理念の作り方，診療時間や休診日の設定など，すでに開業した先生にとっても関心の高いテーマとなっています。
第2章では，末永く働いてくれるオープニングスタッフの採用のコツについてお伝えします。スタッフ採用は開業後でも課題とされる先生が多いですが，最も重要になるのがオープニングスタッフの採用です。一般採用だけでなく縁故採用，承継開業時のスタッフの引き継ぎなど，体系的にまとめました。
第3章は，主にオープニングスタッフ採用後から開業日までに行うことを重点的にまとめました。優秀なスタッフから内定辞退されないための対策や試用期間の注意点，雇用契約書や就業規則などについてお伝えします。開業日を迎えるまでのスタッフとの過ごし方は，開業直後の医院経営で大きな影響を与えることがあります。
第4章では，開業直後の医院・クリニックに起きやすい退職や問題スタッフとのトラブルの予防策や対処法をお伝えします。特に開業直後では，せっかく採用したスタッフが全員辞めてしまったというケースが少なくありません。特に結束力が高い開業前後では，1人の退職をきっかけに連鎖退職が起きる可能性があるので注意が必要です。
第5章では，医院・クリニックの組織力を強化して生産性を上げていくためのスタッフマネジメントをお伝えします。院内の組織力は，思った以上に医院経営に直結してきます。開業直後から軌道に乗っている医院・クリニックの特徴を踏まえて，スタッフマネジメントのコツについてお伝えします。
「ヒト」の問題に悩まされなくなると，日々の診療のストレスが大幅に軽減できます。
また，業務の生産性や患者さんの評判にも大きく影響するので，医院経営が軌道に乗りやすくなります。
本書で先生の理念や治療方針に共感したスタッフを採用して，開業直後から好スタートを切るきっかけになれば幸いです。

著者代表
税理士法人テラス 税理士　笠浪　真