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日常診療に潜む法的リスク 適用シーンから学ぶ医療関連法

当たり前にやっている臨床での対応,実は法的にアウトかも?!

定価:3,960円
(本体3,600円+税)

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著: 越後純子(弁護士・医師)
判型: A5判
頁数: 250頁
装丁: 2色刷
発行日: 2025年03月21日
ISBN: 978-4-7849-0192-0
版数: 初版
付録: 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます)

日本の医学教育では,医療にかかわる法律について実践的に学ぶ機会は皆無です。しかし,日常診療の中には,医療者が当たり前にやっていることであっても,法律的にはリスクのある行動が多くあります。本書では,そんな日常診療に潜む法的なリスクを弁護士と医師のダブルライセンスを持つ著者が丁寧に解説しています。

本書を読めば……

▷誰もが一度は経験したことのあるCaseを通して,なにが法律的にアウトなのかわかります
▷法的なトラブルに対する「具体的な対処法」がわかります
▷医療者と法律家の考え方のギャップがわかります

具体的なトラブルのCaseにすぐにあたることができるような構成になっているので,本書を手に取って「今,すぐ,自分に必要」なCaseを参照してみてください。本書を読むことで,トラブルに遭遇した時に自分がなにをすべきかわかるはずです。

目次

1章 法律的視点からみた医療記録のありかた
1 医療紛争とその防波堤としての医療記録
Case 1 突然死に納得できない患者家族
Case 2 Case 1,病院側の視点
Case 3 いわゆる「クレーマー患者」への対応
2 その説明で大丈夫? インフォームドコンセント(IC)と説明義務
Case 4 ハイリスク患者の術前説明
2章 診断書作成にまつわる危険
1 患者の希望どおりの診断書を作成してよいのでしょうか? 診断書交付義務
Case 5 自ら診断していない過去の交通事故の診断書
Case 6 気を付けよう,保険金詐欺の片棒担ぎになりかねない
2 公的機関へ提出する診断書に関する留意点
Case 7 故意に医学的所見と異なる記載をすること
Case 8 求められたら直ちに診断書を出さなければならないのか
Case 9 死亡診断のタイミングは家族の到着に影響されない
Case 10 遺言書の効力を左右する診断書
3章 診療拒否,応招義務を再確認
この患者,本当に断って大丈夫?─応招義務と正当事由
Case 11 患者都合の時間外診療
Case 12 時間外の急患
Case 13 過去の診療費未払い
Case 14 無保険の外国人観光客
Case 15 クレーマー患者
4章 非日常シーン─医療事故発生時の注意点
1 院内発生の医療事故死も警察に通報すべき? 医師法第21条「異状」の解釈とは
Case 16 外表の異状は24時間以内の警察通報対象
Case 17 診療関連死と異状死の関係性
2 これって,事故調に報告が必要? 医療法の医療事故調査制度の届出基準
Case 18 死亡を予期できていたか
5章 裁判事例などからみた紛争の考え方
1 患者から金銭要求されたらどうする?─治療行為に伴って,金銭など,医療提供以外の要求を受けた場合の考え方
Case 19 採血時のしびれにはその場の丁寧な記録が重要
Case 20 患者がしびれを訴えているのに採血続行すると…
Case 21 医学的根拠に乏しいクレーム
2 裁判で求められる医療水準
Case 22 ガイドラインから外れた治療下での合併症
3 ほかの医療者のミスの影響は?─医師間(研修医・指導医間,同一診療科内,他診療科),他職種の場合
Case 23 診療科内カンファでの治療方針決定とその後
Case 24 指導医の指導とその責任範囲
Case 25 診療科間,医師と看護師での役割と責任の分担
4 なぜ,病院で起きる転倒・転落,誤嚥による窒息は医療事故なのか
Case 26 ミトンによる拘束に違法性はないと判断
Case 27 居室で倒れた状態で発見。転落防止義務違反はないと判断
Case 28 ICUでベッドから転落し,転落防止義務違反が認定
Case 29 術後のレベル低下時の誤嚥・窒息の事案
6章 悩ましいシーン:ガイドライン,医療倫理などの適用場面
1 場面別,人生最終段階の治療方針の決め方について
Case 30 死期は迫っているが,意思表示ができる患者の場合
Case 31 死期が迫って意思表示ができない患者の場合
Case 32 突発事故による意識不明の場合
2 このような手術は続けてよいのでしょうか?─クリニカルガバナンスとプロフェッショナリズム
Case 33 不審死が続く手術の告発
7章 個人情報,プライバシー保護
1 これって守秘義務違反?─知っておくべき,個人情報の扱い
Case 34 患者データの紛失
Case 35 個人情報の第三者提供
Case 36 ほかの患者がいるところでの会話とプライバシー
Case 37 インターネットの書き込み
2 院内での録音は禁止できる?─録音,写真・動画撮影等
Case 38 無断録音と裁判
Case 39 相手の意思に反した盗撮の場合
Case 40 患者本人の意思ではないカメラの設置
8章 虐待関連法
虐待かも。そのとき,どうしますか?
Case 41 児童への身体的虐待が疑われる場合
Case 42 医療ネグレクトの場合
Case 43 高齢者虐待
Case 44 生活を共にするパートナーからの暴力
9章 ハラスメント関連法
1 これってパワハラですか?─指導とパワハラの境界は
Case 45 暴力や,業務と関係ない内容の叱責の事例
2 患者の性的な言動って,我慢しなければならないのでしょうか?─医療機関で求められるセクハラへの対応
Case 46 管理者が患者からのセクハラを放置する
3 これって,マタハラですか?─妊娠・出産に関する言動により,職場環境が害される
Case 47 妊娠を報告しにくい環境を作り出している上司
10章 体系的理解のために
フローチャートによるまとめ─法律,ガイドラインの有無によるパターン別対応

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序文

 本書を手に取って下さった方の中には,かつて筆者がそうであったように日常診療に関連する法的リスクに漠然と不安を持っている方が少なからずいらっしゃると思います。日本の医学教育を顧みれば,医療関連法について実践的な知識やノウハウを学ぶ機会がないのですから,当然のことです。
 筆者は放射線科の医師として臨床を経験した後,法律家を志しました。10年以上院内弁護士として勤務し,医療現場の中で様々な事例や相談に遭遇しました。そのなかで,「知ってさえいればより安心して日常診療に専念できるのに」と感じることが多々ありました。ただ,法律は学習対象として無味乾燥なものであることもよく理解できます。そこで本書では,日常診療にお忙しい方々に直感的に習得して頂きやすいように,適用シーン毎に想定されるトピックについてCaseアプローチで解説しました。似たようなトピックがあったときに辞書的に拾い読みすることができるようにしてあります。
 コンテンツ構成は, ざっくりと医療特有の法律とその他の法律の2部構成になっています。前半は,医療に関連する法律の規定について扱っています。1〜5章では法律で裏打ちのある,日々の診療録の記載(1章),診断書の交付(2章)という身近なトピックに始まり,トラブルの要素が入った診療拒否(3章),非日常的な医療事故の場面に関連した,異状死届出義務,医療法の医療事故調査制度(4章),医療訴訟の判断枠組みについて(5章)実際の裁判例を素材に,それぞれ解説しています。6章は法律の裏打ちがないガイドラインや倫理に関するトピックを扱っています。日常場面から非日常の医療事故の場面まで,遭遇頻度が高い順に並べていますので,ご自身が必要なところまで読み進んで頂くのも良いかもしれません。
 後半は, 社会全体に適用される法律であって, 医療現場特有の対応を求められる個人情報・プライバシー保護(7章),虐待防止(8章),ハラスメント(9章)といったトピックを扱っています。こちらは,章相互の関連性はなく独立していますから,ご興味や必要性に応じて拾い読みして頂けるようになっています。
 それぞれの項目ではまず,「なぜ,知らなきゃマズイ」のかを適用場面や背景事情に沿って解説しています。Caseでは単に知識を得るのではなく, 類似の問題への応用が利く思考法が知らず知らずのうちに身につけられるように構成してあります。最後にtake home messageとして「まとめ」ました。医学も法律も同じケーススタディであって,思考パターンは似ていますので,原則さえ理解できていれば,
何かのときに応用が利くものです。
本書が少しでも皆様の日常診療のお役に立てば幸いです。

2025年2月
越後純子

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