ヤングケアラーの支援を推し進めるため、「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が2024年6月5日に可決・成立した。この改正法では、いままで法制上の位置づけがなかったヤングケアラーについて、その定義を「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」とし、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象に明記した。
定義の中で「過度に」と表現される部分については、こども家庭庁からの通知1)において、「遊びや勉強等の子どもとしての健やかな成長・発達に必要な時間」や「勉強や就職準備等の自立に向けた移行期として必要な時間」を奪われたり、ケアに伴い身体的・精神的負荷がかかったりすることによって、負担が重い状態になっている場合を指すことを示した。また、「家族の日常生活上の世話」には「介護」だけでなく、幼いきょうだいの世話や家事、労働のほか、目の離せない家族のみまもりや声がけなどの気遣い、心理的な配慮、通訳なども含まれるとしている。
ヤングケアラーは自身がヤングケアラーであることに気づきにくく、自分から支援を求めるのは困難であることが多い。我々医療者は、ケアを受ける側である介護を要する高齢者や慢性疾患を抱える子ども、精神疾患を抱える患者等に関わる中でその背景に存在するヤングケアラーの存在に気づき、対応することが児童福祉法上の努力義務として求められている。ヤングケアラーであるかもしれない子どもに気づいた場合は、要支援児童として市町村の窓口となる子ども家庭センター等に情報提供を行う。その後、子ども家庭センター等が中心となって医療機関も含めた地域の様々な支援リソースにつなぎ、サポートプランを作成して子どもと家族を支えていくことになる。
ヤングケアラー支援のプロセスは一方的な押しつけになってはならないが、支援希求の乏しいヤングケアラーの本来持っている権利を守ることも重要であり、支援に繋げるためには丁寧な時間をかけた関わりが必要となる。児童福祉法ではヤングケアラーを含む要支援児童等について、同意がなくても必要な支援に繋げるため市町村に情報提供するよう厚生労働省から通知2)が出されており、その存在に気づいた場合は本人や家族が支援を希望しなかったとしても速やかに市町村に情報提供を行わなくてはならない。医療機関等は支援の入り口として非常に重要な役割を担っている。我々が患者の背後にいるヤングケアラーの未来をよりよいものに変える鍵を握っていることを自覚しなければならない。
【文献】
1)こども家庭庁支援局長通知:こ支虐第265号. 「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」の一部施行について(ヤングケアラー関係).(令和6年6月12日)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e0eb9d18-d7da-43cc-a4e3-51d34ec335c1/3ba2cef0/20240612_policies_young-carer_13.pdf
2)厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課長通知:子家発0720第4号. 「要支援児童等(特定妊婦を含む)の情報提供に係る保健・医療・福祉・教育等の連携の一層の推進について」の一部改正について.(平成30年7月20日)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fdf4848a-9194-4b7c-b228-1b7ed4847d58/7d6a5ec6/20230401_policies_jidougyakutai_hourei-tsuuchi_140.pdf
小橋孝介(鴨川市立国保病院病院長)[ヤングケアラー][子ども虐待][子ども家庭福祉]