監修: | 笠井正志(兵庫県立こども病院感染症科科長) |
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著: | 山本啓央(静岡県立こども病院総合診療科) |
著: | 加藤宏樹(国立成育医療研究センター手術集中治療部) |
判型: | B6変型判 |
頁数: | 208頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2018年04月30日 |
ISBN: | 978-4-7849-4646-4 |
版数: | 第1版 |
付録: | 電子版シリアル付き |
総 論
1.感染症診療 10の原則
2.小児感染症診療の特殊性
各 論
「Focus」
1.細菌性髄膜炎
2.敗血症
3.急性中耳炎
4.咽頭炎,咽後膿瘍,扁桃周囲膿瘍
5.肺炎
6.急性胃腸炎
7.尿路感染症
8.皮膚軟部組織感染症,骨髄炎,関節炎
9.カテーテル関連血流感染(CRBSI)
10.新生児感染症
「Microbes」
1.ブドウ球菌
2.レンサ球菌
3.肺炎球菌
4.百日咳
5.大腸菌
6.インフルエンザ菌
7.サルモネラ
8.カンピロバクター
9.緑膿菌
10.マイコプラズマ
「Antibiotics」
1.ABPC,ABPC/SBT
2.PIPC,PIPC/TAZ
3.CEZ
4.CMZ
5.CTX,CTRX
6.MEPM
7.VCM
8.GM
9.CAM,AZM
10.ST合剤
コラム アンチバイオグラム
薬剤感受性試験
資料 抗菌薬投与量一覧/おもな相互作用一覧
索引
はじめまして,著者の山本啓央と申します。本書を手に取って頂きありがとうございます。
本書は,
•感染症患者に苦手意識のある若手小児科医
•小児患者に苦手意識のある若手救急医/家庭医
•小児科ローテート中の初期研修医や小児科に興味のある医学生
を主な対象としています。
もちろん,ベテランの先生の知識の整理や,小児科医と一緒に働いている医療従事者の方の学習にも使って頂ける内容となっています。
本書の10×3=30項目を十分に理解して頂ければ,一般小児診療で遭遇する感染症には,どうにか一人で“ほぼ”対応できます。
外来受診する小児患者のほとんどは感染症の患者です。しかし,わが国で小児感染症を体系的に学ぶ機会はほぼ皆無に等しく,それぞれの地域や施設における上級医のいわゆる“秘伝の処方”を習得するしかないのが現状ではないでしょうか。
感染症診療において,もちろん患者さんは「私は尿路感染症です」と名札をつけてくれてはいません。病歴,身体所見から感染巣を探り,そこから(ウイルスも含む)病原微生物を予測し,細菌感染症であれば抗菌薬による治療を行う必要があります。
そのため,感染症を学ぶ上で大切なことは「感染巣(focus)ごとの病態生理の知識」,「感染症を引き起こす病原微生物(microbes)の知識」,「感染症治療に用いる抗菌薬(antibiotics)の知識」を有機的に結びつけることです。それぞれをしっかり学んだとしても,それらの知識が有機的に結びついていなければ,実臨床には活かすことができず,「十分に勉強したはずなのに患者さんの診かたがわからない」という漠然とした感染症診療への苦手意識を生みかねません。
本書ではこれだけ知っていれば大丈夫という,focus,microbes,antibioticsのそれぞれ10項目,合計30項目を厳選し,それぞれを有機的に結びつけることを徹底的に意識しました。
また,「感染症診療の基本は理解しているつもりだけど,小児患者はちょっと…」という方のためにも,小児における特殊性を意識した記載になっています。本文中に繰り返し出てきますが,小児も成人も“基本”は同じです。“基本”は同じですが,気をつけなければならない特殊性がまったくないわけではありませんので,読み進めながら小児の特殊性をときどき意識して頂けると,より理解が深まるかと思います。
本書を読めば,どうにか一人で“ほぼ”対応できると書きましたが,“ほぼ”としたのは,理解しやすくするために,記載を簡略化している部分も少なくないためです。読んでいて,「あれっ?」と思ったことがあれば,成書を開いてみて下さい。また,それぞれの項目の最後にfurther readingとして,理解に役立つガイドラインや総説などを付記しています。もう少し知識を深めたいと思った方はぜひご一読下さい。
また本書にまったく記載のないfocus,microbes,antibioticsに遭遇した時も学びを深めるチャンスと思って,ぜひ成書を開いて下さい。万が一,それが緊急性のある場面(ほぼないとは思いますが)であれば,迷わず専門家や上級医に相談して下さい。そしてその後にゆっくり成書で勉強しましょう。
本書を幹に,それぞれの患者さんから学んだ知識を枝葉として,小児感染症診療の力をつけていって下さい。
本書の出版にあたりまして,貴重な機会を頂きました日本医事新報社,また私の勝手な注文にいつも快くご対応頂きました編集部の皆様にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。
本書が小児感染症診療の質の底上げに役立ち,感染症に罹患してしまったこどもの最善の利益につながることを祈っております。
〈謝 辞〉
本書のグラム染色写真は,ホームページ「グラム染色」http://gram-stain.comに掲載されたものを,許可を得て拝借しました。掲載をご快諾下さいました大阪急性期・総合医療センター 総合内科 麻岡大裕先生に深謝申し上げます。
2018年3月 山本啓央