化膿性脊椎炎は,椎体の終板を主病巣とした細菌感染症であり,腰椎,胸椎,頸椎の順に多い。主に血行感染であることが多い。わが国では,高年齢化に伴い,担がん患者や糖尿病や副腎皮質ステロイドの長期服用といった易感染性宿主において発生数が顕著に増加しており,好発年齢は現在70歳代をピークとした一峰性である1)。
中高年で発熱と同時に腰背部痛を自覚した場合は,化膿性脊椎炎の存在をまず疑う。安静時にも痛みがある場合が多く,変性疾患との鑑別診断のために重要な情報となる。医療機関を受診した際には既に解熱していることも多いため注意が必要である。
発症初期は単純X線では診断ができない。血液検査で白血球やC反応性蛋白(CRP)などの炎症反応を確認するとともに,MRIを速やかに施行する。ただし,発症間もない時期にはMRIで信号変化が現れないこともある(MRI delay)ため注意が必要である。CTも必ず施行し,椎体終板の骨破壊の程度を評価する。なお,他臓器の感染症により続発性に化膿性脊椎炎を生じている場合もあるため,感染の原因検索が必要な場合は胸腹部から骨盤までの造影CTを施行するとともに,心臓超音波で感染性心内膜炎の有無を評価する。
臨床所見と血液検査から化膿性脊椎炎を念頭に置き,画像検査を待たずに速やかに介入を開始する。まずは入院安静を指示し,画像検査で診断が確定したら起炎菌の同定を行う。椎間板穿刺が可能であれば,抗菌薬開始前に行う。全内視鏡下の生検であれば椎体間の組織を確実に採取できるため,穿刺針生検よりも培養検出率が高いとされる1)。また血液培養も必ず行う。
ただし敗血症を呈している場合は,血液培養を採取後,速やかに抗菌薬投与を開始するとともに,全身状態の管理を得意とする診療科に協力を依頼する。なお,硬膜外膿瘍や腸腰筋膿瘍のドレナージが全身状態の改善に寄与すると判断される場合は,速やかにドレナージを行う。
化膿性脊椎炎は安静と抗菌薬および外固定による保存治療が原則であるが,近年,外科治療法は大きく変化した1)。椎体終板の骨破壊がない,もしくは軽度の場合は,小侵襲な全内視鏡下搔爬洗浄術が有用である2)。椎体終板の骨破壊を有する場合は,低侵襲な脊椎後方インストゥルメンテーションが有用である3)。
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