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自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)[私の治療]

No.5246 (2024年11月09日発行) P.50

熊﨑博一 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経学分野教授)

登録日: 2024-11-06

最終更新日: 2024-11-05

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  • 「社会的相互交流の障害」「社会的コミュニケーションの障害」「社会的想像力と柔軟な思考の障害」の三つ組を特徴とする発達障害。近年有病率が急上昇している。症状の範囲と程度は個人差が大きい。

    ▶診断のポイント

    診断は状況にもよるが,家族が望み,受け入れてくれそうなタイミングで伝えることが重要である。診断ツールとしてADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule™),ADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)が知られているが,ライセンス獲得が厳しく診断に時間も要するため,日常臨床で行うのは現実的でない。WISC(Wechsler Intelligence Scale for Children)などの知能検査は,患者理解には有用であるが,それだけでは診断できない。ほかにも各種検査が存在するが,重要なのは行動観察および情報収集である。行動観察では,特定の行動パターンや反応を注意深く観察し,それらがどのような状況で発生するかを理解する。情報収集では,幼少期からの詳細な生活,生育歴の評価,また家庭,学校など多様な場面での生活の評価といった情報をもとに総合的に判断して,専門医が診断を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)の三つ組は治るものではない。ASDは,症状や影響の度合いが個人によって大きく異なるため,治療計画は個々の特性や強み,必要性に基づいて行う必要がある。臨床場面では,両親の患者に対する理解が不十分なケースが多くみられる。家族が子どもの特徴を理解し,日常生活での対応を学ぶことが重要である。また家族が,このような障害を持っていても生活しやすいように,子どもの環境調整をすることもポイントになる。いじめはASDの予後を悪化させるリスクになる。環境調整とともに,コミュニケーションや生活支援をすることでいじめを予防する。家族が子どものことを理解し,常に最適な環境を提供できるようになった後は,適切な年齢(発達にもよるが学童後期,思春期頃)から徐々に患者に自己理解を促していくことは重要である。最終的には,患者自身が自分で自身の環境を調整していくことが,治療のひとつのゴールになる。

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