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国民のヘルスリテラシー向上のために行うべきこととは?がん教育から考える[炉辺閑話]

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  • 「子どもへのがん教育」は2017年から学習指導要領に明記され、小・中・高校で授業が始まっていますが、残念ながら、まだ一般的な認知度は高くありません。私自身、がん専門医という立場で毎年6〜7校で外部講師としてがん教育に取り組んでいます。真剣かつ澄んだ眼差しで聞き入る子どもたちの姿は新鮮で、感動を覚えるほどです。

    事後アンケートなどを見る限り、医療者やがん経験者からの言葉が子どもたちに与える影響は大きく、この授業をきっかけに彼らが正しい知識を得るだけでなく、患者への理解と共生、命の大切さを知ることの意義は深いと考えます。しかし、2023年度の調査によれば、医療者やがん経験者が外部講師として関わった授業の実施率は全国でわずか12.4%に過ぎません。

    たとえば、「標準治療でがんが治る可能性が高いが、子宮は摘出しなければならず、合併症が残るかもしれない」という医師の説明と、「この“水”を飲めばがんが消え、副作用もまったくない」という情報があった場合、正しい選択をするために必要なのは、高いヘルスリテラシーです。一方で、日本のヘルスリテラシーは、先進国以外の国々と比較しても最低レベルと報告されています。最近でもSNS上でHPVワクチンやレプリコンワクチンに関する誤情報が広がり、正確な科学的情報が埋もれる中で一般人が右往左往する現状は、それを物語っています。国民が信頼性のある健康情報を入手した際に、理解、評価し、活用できるようになるために、医療者は何をすべきでしょうか。

    私は、次世代のヘルスリテラシーを向上させるためには「学校のがん教育」への医療者の参画が不可欠だと考えています。同時に「大人のがん教育」も推進することで、予防につながる生活習慣の理解や早期発見のためのがん検診受診率の向上にもつながるでしょう。近年、TikTokのようなプラットフォームが若年層にとって重要なニュースソースとなりつつあります。2020年にはTikTokユーザーのニュース閲覧率が22%だったのが、2024年には52%に達しています。こうした状況下で、不確実な情報やデマに対抗するために、日本の学会や医学界はもっと積極的に様々なメディアを使い、正確な情報を発信すべきではないでしょうか。

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