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【識者の眼】「冬に考える熱中症」一二三 亨

一二三 亨 (聖路加国際病院救急科医長)

登録日: 2025-02-04

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真冬のこの時期は救急現場では低体温症患者の対応に追われています。しかし、この真冬に私自身が熱中症の書籍を執筆していることについて、自分なりにいろいろと考えてみたいと思います。

熱中症や低体温症など季節性のある疾患に対してSNSなどの媒体でその都度情報を発信していくのではなく、論文や研究成果、書籍などで発表するためには夏に行ったことをまとめると冬に仕上がります。また、そもそも夏の出来事をきちんとまとめようと思うとその前の冬に準備する必要があると思います。低体温症などは冬に何かをまとめると発表するのは、まったく状況の異なる夏になります。

ですので、この夏、熱中症に対して何かの情報提供をするとなると、この真冬の時期に準備を完成させる必要があります。たとえば書籍であれば、原稿執筆を完成させるということになります。現在、私自身が熱中症に対する書籍の準備していますが、どうしても真冬に真夏をイメージして原稿を書くのは難しいところがあり、その中で何が得られるのか? これを自分自身に尋ねてみました。

思いついた答えとしては、①季節が真逆なので冷静に、頭を冷やして考えられる、②目の前に起きている現象に影響されずに、本当に必要なことを見出すことができる、③情報を自分から積極的・意識的に拾い上げない限り、必要な情報が流れてこないことから積極性が生まれる、ようなことでしょうか。どれも同じようなことを言っているかもしれませんが、少しずつ異なり、このような経験は私自身にとっては考えの幅を広げる上で貴重な修練だととらえています。

少し視野を広げると、想像の世界ですが、たとえばアパレルや電気製品とかも同じように真冬にはもう真夏のことを想定して、いろんな戦略を練っているのかもしれない、と考えました。ふと、何か自分だけが少し大変なことをしているよう思ったことは錯覚であり、世の中、当たり前のように気候や社会情勢の予測など限られた情報・状況の中で先の戦略を立てている様々な業種があることに気づきました。

2025年はどんな夏になるのでしょうか? 熱中症に対して、私の知識と経験の限りではありますが、少しだけでも俯瞰したような形で世の備えになるような実用書を作成していければ幸いです。

一二三 亨(聖路加国際病院救急科医長)[救急医療][熱中症]

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