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【識者の眼】「寒波と熱波」一二三 亨

一二三 亨 (聖路加国際病院救急科医長)

登録日: 2025-03-04

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「最強寒波到来」「この冬一番の寒波」などなど、2月に入り、ニュースでよく耳にしたと思います。ただ、寒波の反対の言葉、熱波という言葉はいかがでしょうか? 海外ではheat waveとして報道されるわけですが、日本では聞かない言葉です。「そう言われるとそうだな……」と皆様も感じられると思います。

本稿では、夏に向けて熱中症の書籍を作成している立場から、この寒波と熱波について少しお話しをしてみたいと思います。

まず、最近よく耳にした「寒波」についてです。気象庁天気相談所に問い合わせてみると、寒波の定義ははっきりと定められていました。主として冬季に広い地域に2〜3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下をもたらすような寒気が到来すること(公式見解)、とのことです。

定義がはっきりしているので、当然報道機関などで使用されていると思います。医学でもそうですが、何事も定義が大切だということを学びます。

では、「熱波」はどうでしょうか? 先ほどの、気象庁天気相談所に問い合わせてみると、気象庁には熱波の定義はないとのことでした(公式見解)。インターネット上には少し定義のようなものが都市伝説レベルで出てきますが、公式にはない、とのことです。報道機関としても公式に定義されていない言葉を使用するのが日本では困難というところなのでしょう。

定義以外に熱波が日本で使用されない他の理由を、私自身考えてみました。

①熱波は、そもそも暑い風が吹く場合であって、日本の夏は、強い風が吹くことがないためあまり使用されない

②欧米では数年に1回、波のように暑さがくるのに対して、日本の夏は毎年暑く、波ではないため使用されない

③寒波は一時的に急激に気温が下がる現象を指し、波のように来て去るイメージであるが、日本の夏は長期間にわたって高温が続くため、波のイメージではない

などなどが思いつきましたが、どれもはっきりとした理由とは言えません。

さて、2025年の夏は“熱波”という言葉が“寒波”と同じようにニュースで取り上げられるのでしょうか? そのようなことをふと考えながら、まずは寒波を耐え凌ぎながら、夏に備えたいと思います。

一二三 亨(聖路加国際病院救急科医長)[救急医療][定義

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