【概要】新専門医制度による地域医療への影響を懸念する声を受け、厚生労働省の「専門医養成の在り方に関する専門委員会」(永井良三委員長)が3月25日に初会合を開催。日本専門医機構と関係団体の意見調整が始まった。医師偏在の回避は、各都道府県と地域の関係者の協議の場に委ねられる。
新専門医制度を巡っては現在、専門医の認定・評価を行う「日本専門医機構」(機構)が来年4月の養成開始を目指し、基幹施設から専門研修プログラムの申請を受け付けており、秋には専門医を目指す「専攻医」の募集が始まる予定となっている。
しかし、2月18日の社会保障審議会医療部会では、「医師偏在を助長する」など地域医療への影響を懸念する意見が続出。専門委員会を設置し、機構と関係団体で意見調整を行うこととなった。専門委員会には、日医、病院団体、大学などの代表が委員として参加。機構の池田康夫理事長らが参考人として出席する。
●調整の場となる「協議会」が未設置の県も
会合で厚労省は、専門研修プログラム認定までの調整方針案を提示した。その中で機構は、プログラムの審査に当たり、診療領域ごとに研修施設のない2次医療圏が出ないよう調整。専攻医の募集定員については、診療領域ごとに専攻医数が過去3年間の平均から激変しないようにし、都市部では現状を上限と設定。人口に比して専攻医養成数が少なすぎる都道府県に対しては、基幹施設の追加など、募集数が増えるよう調整を行う。
これらの審査・改善の状況は、都道府県と専門委員会に随時、情報提供される。したがって、医師の地域偏在が起きないよう調整する場は、各都道府県の関係者による「協議会」となる(表)。
ただ、3月10日現在で協議会を開催した都道府県は16自治体にとどまる(図1・2)。プログラムの内容を把握していても、具体的な調整には入っていない自治体もあり、全国的には新専門医制度の準備状況には大きな差がある。
●厚労省「関係者の合意が最重要」
新専門医制度はプロフェッショナルオートノミーに基づき運営されるという理念がある。このことから、厚労省の神田裕二医政局長は会合で、「行政が出すぎないように意識してきた」と述べている。一方で、「専門医の広告にも関わる問題で、制度のために2016年度予算で1億4000万円を計上している。民間の自主的な仕組みとは次元が異なる」とも述べ、「調整の労は厭わないが、関係者間の合意形成が最も重要」として、円滑な意見調整を求めた。