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割り切れない「パナマ文書」 [お茶の水だより]

No.4803 (2016年05月14日発行) P.12

登録日: 2016-05-14

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▼タックスヘイブン(租税回避地)を利用している法人や株主の氏名・住所等が記載された「パナマ文書」の情報を検索・閲覧できるデータベースが10日未明、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によって公開された。本誌も早速、閣僚や医療関係団体の名をひとしきり検索してみたが、ヒットしなかった。次に、“clinic”や“hos-pital”などのキーワードで検索すると世界中の医療機関と思しき法人・個人が表示されたが、ひと目で日本の医療関係者と分かる名は見つからなかった。
▼しかし、日本の医療関係者も無縁というわけではなかった。医大名誉教授が代表を務める法人の名があったのだ。当人は研究資金を得るために利用したが、恩恵は受けていないとテレビの取材に答えていた。また、ICIJと提携する朝日新聞の調査では、海外での病院開業のためにタックスヘイブンを利用する医師の存在も確認されおり、他にも利用者がいる可能性は高い。
▼節税目的や投資の便宜を受ける目的でのタックスヘイブンの利用自体は違法ではない。政治家でも公務員でもない医療関係者による利用に対してとやかく言うのは「余計なお世話」だろう。もしかしたら中には、浮いた税を研究開発や医療機関の設備に回し、医療の質向上に役立てようという利用者もいるのかもしれない。
▼ただ、医療は国民の納めた税などの公的資金なしに成立しない。それを踏まえると、使途が何であれ、医療関係者によるタックスヘイブン利用は道義上、本当に何の問題もないと言い切れるのか。利用者の情報を赤裸々に示すデータベースとは裏腹に、何とも割り切れない思いになった。読者諸氏の目にはどう映っているだろうか。

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