株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

レビー小体型認知症の表記

No.4749 (2015年05月02日発行) P.64

小阪憲司 (横浜市立大学名誉教授)

登録日: 2015-05-02

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)の「レビー」とは,ドイツ人医師Friedrich Heinrich Jacob Lewy(1885~1950)のことと思います。この名の発音を日本語で表記すると,「レヴィ」となると考えますが,「レビー」と表記するようになった経緯を,本疾患提唱者の小阪憲司先生にご教示頂きたいです。 (香川県 M)

【A】

ご指摘の通り,レビー小体型認知症のLewyはユダヤ系ドイツ人で,ドイツのミュンヘン大学医学部精神医学教室のAlzheimerのもとで1912年(文献1)にパーキンソン病の脳幹の神経細胞の中にLewy小体(この名称は1919年にフランスのTretiakoff(文献2)により命名された)を見出して報告したことで有名になりました。後に彼は米国に亡命し,Leweyと名前を変えたため,最近は国際的にLewy body(ルイ・ボディー)と呼ばれることが少なくありません。
筆者はAlzheimerやLewyがいたことのあるドイツ国精神医学研究所を前身とするMax-Planck精神医学研究所に1977~78年に留学したこともあり,Lewyのことを「ルイ」と呼ばずに国際会議でも「レビー」と呼んでいます。
Lewy小体は,わが国では正式には「レヴィ小体」と記されていますが,「ヴィ」というのはいかにも古くさい印象があり,Lewy小体病(文献3) ,びまん性Lewy小体病(文献4) や,Lewy小体型認知症(文献5) は最近の新しい概念であることから,現代風に「レビー」と呼んだほうがよいと考えて,筆者はLewy body disease(レビー小体病)(1980)(文献3) やdiffuse type of Lewy body disease(びまん性レビー小体病)(1984)(文献4) を提唱したときから「レビー小体」という言葉を使用しました。レビー小体型認知症も,1996年に“dementia with Lewy bodies”(文献5)という名称が提唱され,これを日本語で紹介したときから,「レビー」と呼んでおり,特に深い意味はありません。

【文献】


1) Lewy FH:Handbuch der Neurologie. vol 3. Lewandowsky M, ed. Springer-Berlin, 1912, p920-58.
2) Tretiakoff C:Contribution a l’etude de l’anatomie pathologique du locus niger de Soemmering avec quelques deduction relatives a la pathogenie des troubles du tonus musculaire et de la maladie de Parkinson. Theses de Paris, 1919.
3) 小阪憲司, 他:精神誌. 1980;82(5):292-311.
4) Kosaka K, et al:Clin Neuropathol. 1984;3(5):185-92.
5) McKeith IG, et al:Neurology. 1996;47(5):1113-24.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top