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認知症のうつ症状とうつ病の鑑別

No.4726 (2014年11月22日発行) P.60

朝田 隆 (筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学教授)

登録日: 2014-11-22

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

認知症,特にレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)と血管性認知症(vascular dementia:VD)では,その早期にうつ症状がみられることが多くあります。認知機能低下がはっきりしない段階における認知症とうつ病の鑑別診断について,筑波大学・朝田 隆先生のご教示をお願いします。
【質問者】
宇野正威:オリーブクリニックお茶の水顧問

【A】

高齢者のうつ症状について,認知症を背景として現れるものを,いわゆる内因性のうつ病や心理的要因の強いうつ状態から鑑別するポイントを問われたご質問です。その上で,こうした鑑別が必要になりがちな認知症性疾患として,DLBとVDに注目されています。いずれの認知症でも認知機能障害が明らかになる前に,稀ならずうつ症状が現れるからです。
いかなるタイプのうつであっても,診断に際して既往歴聴取を含む問診が基本となることは言うまでもありません。しかしこのような場合の問診では,特に身体所見に関わるエピソードに留意しつつインタビューを進めることが大切です。というのは,認知症などの器質的障害では,こうした症状が早期からしばしば認められるからです。
たとえばDLBであれば,軽微な振戦・筋緊張やレム睡眠異常としての寝言や寝ぼけ,また一過性の意識消失や起立性低血圧(立ちくらみ)があります。VDなら麻痺や構音障害,また感覚障害があるかもしれません。さらにこれまで処方された各種の向精神薬による副作用の有無についても尋ねましょう。というのは,DLBではこれがかなり高率にみられるからです。
こうした情報を確認した上で,うつ症状がこれら2つの認知症疾患に由来することを確認するには脳画像検査が必要になります。VDの場合は,CTやMRIなどの形態画像によって特に有用な情報が得られます。脳梗塞や脳出血あるいは脳動脈硬化の所見などです。こうした所見があれば,うつ症状が脳血管病変に由来する可能性はかなり高いでしょう。
次に,SPECTやPETといった機能画像は,DLBによるうつ症状を診断するのにとても有用です。後頭葉における脳血流低下が有名な所見ですが,これが認められないからといってDLBが否定されるわけではありません。アルツハイマー病に類似した帯状回後部や楔前部における低下所見がみられることも少なくはありません。
なお,DLBに先駆するうつ症状とともに自律神経の障害がみられることもあります。そこで,心臓の交感神経系機能を評価するMIBG(metaiodobenzylguanidine)心筋シンチグラフィーにも診断上での有用性があります。
最後にうつ病は,ありふれた疾患です。うつ病や躁うつ病の既往を有する人がDLBやVDを発症することは稀ならず経験します。このようなケースでは特に画像所見が不可欠になります。

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