腎機能の低下により,蛋白代謝物が蓄積して尿毒素となるため,低蛋白食は尿毒症症状を和らげる。一方,低蛋白食が腎機能低下の進行自体を抑制するかどうかについては,以前より議論のあるところである。動物実験では,低蛋白食は腎機能低下を明確に抑制するが,多施設共同の臨床研究では,低蛋白食が腎機能低下を抑制することを明確に示したエビデンスは乏しい。これは,嗜好が大きく影響する食事療法の実行の難しさを示している可能性がある。
日本腎臓学会の『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013』では推奨グレードBで,「画一的な指導は不適切であり,個々の患者の病態やリスク,アドヒアランスなどを総合的に判断して,たんぱく質制限を指導することを推奨する」としており,本文で「たんぱく質制限は,腎代替療法が必要となるまでの時間を延長するが,腎機能の低下速度を抑制する効果には乏しい」と記載している。高齢者では,低栄養などにも注意が必要となる。
特に,糖尿病患者ではメタ解析で腎機能低下を抑制する効果が示されておらず(文献1),2015年の米国糖尿病学会のガイドラインでは,低蛋白食はエビデンスグレードAで「推奨しない」とされている(文献2)。糖尿病患者で腎不全となった場合の低蛋白食については,その適応と目的をよく考えて行うべきである。
1) Pan Y, et al:Am J Clin Nutr. 2008;88(3):660-6.
2) Diabetes Care. 2015;38(Suppl 1).