最新のガイドラインでは,高齢の慢性腎臓病(CKD)患者の降圧目標として150/90mmHg未満が推奨されており(文献1),高齢者に対してよりゆるやかな降圧目標が設定されるのが近年の方向である。しかし最新のSPRINT研究の結果は,この風潮に一石を投じるものである(文献2)。
糖尿病を伴わない高齢高血圧患者9361名(平均年齢68歳)を対象に,降圧目標を収縮期血圧120mmHg未満の強化降圧群と140mmHg未満の通常降圧群に振りわけ,心血管系合併症をアウトカムとしたSPRINT研究は,強化降圧の明らかな優位性のために早期に打ち切りとなった。ただし,注意してみるとCKD患者を対象としたサブ解析では,両群間に有意差は認められない。
SPRINT研究の対象患者は糖尿病を伴わないことから,このCKDの原因の多くは腎硬化症と推定され,既に全身の動脈硬化が高度のため,強化降圧の有効性が示されなかったものと考えられる。これは糖尿病を合併した高血圧患者を対象としたACCORD研究において,強化降圧群と通常降圧群で有意差が認められなかった結果に合致する(文献3)。やはり,ハイリスクの高齢CKD患者においては,ゆるやかな降圧が望ましいのであろう。
1) 慢性腎不全診療最適化による新規透析導入減少実現のための診療システム構築に関する研究研究班, 編:CKDステージG3b~5診療ガイドライン2015. 東京医学社, 2015.
2) SPRINT Research Group:N Engl J Med. 2015;373(22):2103-16.
3) ACCORD Study Group:N Engl J Med. 2010;362(17):1575-85.