著者は早稲田大学理工学研究科(物理学専攻)卒業後、2001年毎日新聞社入社、現在東京本社科学環境部記者。2015年、第46回大宅壮一ノンフィクション賞、日本科学ジャーナリスト賞受賞(須田桃子 著、文藝春秋、2015年刊)
リアルタイムに理研の事件が走馬灯のように思い出される。本欄には一般の作家の小説から、これはと思う一冊を選ぼうと思ったが、「捏造」と「科学者」という文字に興味を抱き購入、読破した。
一気に故笹井芳樹氏の自殺にまで読み進んだ。と同時に、この本は何のために上梓されたのか、真意が読み取れなかった。つまり、肝心な情報提供の「ニュースソース」が明らかにされていないところがあり、このことがかえって著者(科学環境部記者)の意図した筋書きになっているのではないか、という疑いを持たせることになった。
驚いたことは、故笹井氏、若山輝彦氏あるいは丹羽仁史氏と著者との間で交わされた多数のメールのやりとりである。メールを介して、著者の個人的な多くの質問に対する信じられないくらい真面目かつ真摯な返答が細かに描出されている。彼らは、メールのやりとりが公表されることなど、まったく意識していなかったであろう。ましてや、誰が掲載を許可したのだろうか。
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