2004年10月23日に新潟県旧川口町を震源地とするM6.8の地震が発生した。当時、被災地では避難所不足や余震が多かったことから、家の横にある車の中へ「とりあえず避難」として車中泊する被災者が非常に多かった。また、インフラの復旧が遅れたことから車中泊が長くなった。当時、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)は一般に知られていなかったので、被災者は無防備に車中泊を続けていたが、その数は5万人以上と推定された。そうした中で、車中泊中に突然死する被災者が増えていった。
私が被災地で車中泊が多いと認識したのは、10月28日に新潟大学病院に十日町市からヘリコプターで肺塞栓症が搬送されて診療したときであった。すぐさま、車中泊避難は飛行機の長時間フライトと同じなのでエコノミークラス症候群を発症するであろうということに気づいた。そこで、大学病院の救急部から携帯型エコー装置を借りて被災地で下肢静脈エコーを行い肺塞栓症を予防することにした。なぜなら、日本でも院外発症の致死的肺塞栓症は下腿のヒラメ静脈血栓が進展して起きることが証明されており、被災地でも同じことが起きていると確信したからである。
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