2014年度診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟は、暮らしに一番近い入院機能として、「3つの受け入れ機能(ポストアキュート、サブアキュート、周辺機能)と、院内・地域内の2段階の多職種協働を駆使した在宅・生活復帰支援機能」の4つの機能を活かし、地域包括ケアシステムを構築・活性化します。
地域包括ケア病棟は、特定集中治療室や回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟のように特化した機能を持ちません。特徴がないことは逆を言えば、懐が深いことになります。地域包括ケア病棟の4つの機能を自在に活用したり、院内のほかの機能を持つ病棟と組み合わせたりすることで、病院全体で急性期から慢性期・在宅までの様々な場面を支えられるので、病院理念の実現や、地域医療構想と地域包括ケアシステムにおけるご当地ニーズに応えることができます。これを実現する医師や歯科医師には、様々な能力が求められます。地域包括ケア病棟協会では「地域包括ケア病棟で活躍する医師・歯科医師像」としてホームページで提言していますが、本協会の役員にも様々な視点や意見があり、取りまとめるには時間を要しました。
まず、診療においては、医科歯科ともに、移動、摂食、排泄、清潔などの手段的日常生活動作(IADL)の向上を主としたリハ、栄養管理、認知症ケア、薬剤管理・減薬調整、医療安全・感染対策、疾病予防など、多様な分野に精通した総合力が必要になります。その上で、医科においては、内科・外科・救急・在宅を基礎にした総合診療が、歯科においては、歯形態回復と口腔機能回復、摂食・嚥下、栄養サポートを基礎にした、幅広い口腔総合診療が求められます。加えて、フォーマル・インフォーマルサービスを提供する方とチームを編制して院内・地域内で協働するためには、包容力や調整力、社会資本の活用・経営への貢献も見据えた企画力などの人間力も求められます。
以上の能力は、医師・歯科医師が個人で総合的に獲得することが理想ですが、まずは医師同士、歯科医師同士あるいは、医師・歯科医師協働のチームで創り上げることが現実的です。
母校の先輩で、病院勤務のベテラン総合診療医は、「地域包括ケア病棟はありそうでなかった総合診療医のベースキャンプ」と話しています。私は、地域包括ケア病棟を持つ病院が、個人やチームとしての資質を育む場、モチベーションを高く働き続けられる場として、医師・歯科医師に選んでもらえることを夢見ています。</p