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波紋を呼ぶ高齢者の定義見直し [お茶の水だより]

No.4839 (2017年01月21日発行) P.14

登録日: 2017-01-19

最終更新日: 2017-01-19

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▶高齢者の定義を従来の65歳以上から75歳以上に引き上げ、65〜74歳は「准高齢者」とする日本老年学会・日本老年医学会の提言が波紋を呼んでいる。両学会は提言に関する詳細な報告書を今年3月までに公表する予定だ。検討の段階では、具体的な年齢を新たに示すことはしない方針だっただけに、最終的に定義を10歳引き上げたことを意外に感じる読者も多いのではないか。
▶高齢者の定義は社会保障制度の持続可能性に大きく関わる問題だ。昨年末には、高齢者の定義を70歳以上に引き上げることを盛り込んだ報告書を内閣府が近く公表する予定との新聞報道があった。両学会は今回の提言について、あくまで医学的な観点からの問題提起であることを強調し、まずは社会的な議論の高まりを期待したいとしている。塩崎恭久厚労相は6日の会見で、社会保障制度での高齢者の定義を見直すことには慎重な考えを示しているが、少子高齢化により、社会保障財源が厳しさを増す中、提言が社会保障制度の議論に影響を与える可能性は否めない。
▶両学会は定義見直しの臨床上の意義について、准高齢者は中年の延長として予防的な介入が重要な世代であり、75歳以上は、例えば筋肉を維持するために栄養摂取が重要になるなど、それまでとは違った配慮が必要な世代だと説明している。定義見直しの課題としては、現在の高齢者にみられる身体能力の改善が次世代でも続くか未知数であることや、高齢者の多様性などを挙げている。今回の提言を契機に、高齢者の身体能力の改善を実際の医療現場にどう反映するかさらに検討を進めるとともに、身体能力の改善が今後も続くよう、次世代の健康教育に力を入れることが重要だ。

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