著: | 中村 造(東京医科大学病院感染制御部講師) |
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判型: | B6変型判 |
頁数: | 192頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2020年03月26日 |
ISBN: | 978-4-7849-4898-7 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
■1:総 論
1.高齢者の感染症診療の原則
2.感染症と鑑別が必要な非感染性疾患
■2:疾患・病態各論
1.感 冒
2.気管支炎
3.肺 炎
4.結 核
5.インフルエンザ
6.感染性胃腸炎
7.クロストリジオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル感染症
8.尿路感染症
9.皮膚軟部組織感染症
10.血管内留置カテーテル関連血流感染症
11.敗血症
12.骨髄炎・椎体炎
13.感染性心内膜炎
14.手術部位感染症
15.不明熱
■3:感染対策
1.標準予防策と感染経路別予防策
2.薬剤耐性菌
3.結 核
4.インフルエンザ
5.ノロウイルス
6.クロストリジオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル感染症
7.ウイルス肝炎
8.HIV
9.梅 毒
10.疥 癬
■4:高齢者へのワクチン
■5:抗菌薬
1.抗菌薬解説
2.抗菌薬の副作用
■6:微生物
1.微生物解説
2.微生物検査解説
コラム
non-pharmaceutical intervention(NPI)
慢性気管支炎
気管支拡張症
ESBL産生大腸菌なのに,耐性と報告された第三世代セファロスポリンが効いてしまった
感受性結果は絶対か
抗菌薬の投与期間は絶対か
感染性心内膜炎と大腸癌の関連性はあるのか
推奨されている抗菌薬の治療期間が長いと感じる
巻末綴じ込み付録:「主要抗菌薬スペクトラム一覧」「推奨抗菌薬投与量」「感染臓器と頻度の高い起因菌,抗菌薬」「血液培養のポイント,血液培養の採取手順」「感染予防策一覧」「主要な感染症と抗菌薬治療期間」「物品消毒一覧」「生体消毒一覧」
序文
十数年前には数えるほどしかなかった,臨床感染症で使える良質な書籍は,ここ数年で急速に増加している。感染症医がどのように考え,臨床で判断を行うかを細かく解説しており,私も含めた多くの臨床医に大きく影響を与えている。この臨床感染症に関する指南書へのニーズは多方面へと広がり,高齢者の感染症診療についても同様である。
しかしながら,高齢者の診療においては,感染症診療だけの理想解を追求すると,他のアウトカムが改善しないことが往々にして発生する。「ガイドラインではこの抗菌薬が推奨されるが,実際にはその薬剤は投与できない」とか,「マニュアルに記載される投与期間は点滴で4週間が推奨されるが,それを完了する頃にはADLが低下してしまう」などの問題が発生する。つまり,高齢者の感染症診療は,教科書通り感染症診療を追求すること自体が,現実的な解答ではない場合がある。実際の臨床現場では,侵襲的処置を伴う診断をどうするのか,治療をどこまで追求し,いつまで続けるのか,また,どこをある程度諦めるのか,決断を迫られる。時に治療のエンドポイントがcureでないこともある。
これまで8,000例を超える感染症症例を経験し,その情報を日々case sheetに記載し,当施設のデータベースとして蓄積してきた。その感染症症例のうち75歳を超える高齢者が占める割合は,現在の日本の超高齢化社会を反映してかなり多い。高齢ゆえにうまくいかない現実を数多く経験してきた。この経験を踏まえ,高齢者の感染症診療について,理想と現実を考慮し,自分が行うプラクティスを熟考して本書を作成した。また,実際の臨床現場で遭遇しやすい疾患を非感染性疾患も含め広く解説し,抗菌薬や微生物についても,非専門家でも理解できるように表現した。
本書の特徴として,臨床現場で経験する,典型的な治療とその反応の経過を架空のcase sheetで再現することに今回トライした。熱型や検査所見などの全経過が確認でき,炎症反応の高値などによる血液所見に動じず感染症診療を進める姿勢を表現できたと思う。本書が,超高齢化社会のわが国における,高齢者の感染症診療のプラクティスの一助になることを願う。
2020年2月 中村 造