▶「今まで一生懸命生きてきたのだから、人生の最後を人任せにしないでください。自分が動けなくなった時、どうしたいのかを考えて下さい。地域包括ケアの中心は住民の皆さんです」。埼玉県川口市で2月、地域の医療機関が旗振り役となり、市民を対象に地域包括ケアをテーマにした交流会が企画された。冒頭の発言をしたのは地域包括支援センターの看護師だ。会場には約400人が集まり、医師や看護師の講演に熱心に耳を傾けた。
▶地域包括ケアについて厚労省はホームページで「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステム」と説明する。
▶2018年度は診療報酬・介護報酬の同時改定がある。最大の課題は地域包括ケアの構築だ。日本医師会の横倉義武会長は3月の日医代議員会で、「(同時改定で)地域包括ケアを何としても作り上げなければ、高齢化が進む我が国の将来はないと危機感を持っている」と発言。そのために必要な財源を確保するよう政府に主張するとの決意を新たにした。さらに今月の記者会見では、応能負担の推進などの独自の財源確保策を披露している。
▶25年まで8年と迫った現在、「地域包括ケア」は社会保障の専門用語ではなく、一般市民が定年後の人生設計を具体的に考える際の重要な要素になっている。6月に策定する「経済財政運営と改革の基本方針2017」(骨太方針)に向けて今月から財務省も議論を始めた。国民が自分らしい暮らしを人生の最後まで続けるために必要な財源確保策の議論を医療関係者の間でさらに深める必要がある。