▶今号では22日投開票の衆議院議員総選挙における、主要政党の社会保障政策の概要を比較した。選挙協力関係にある政党間でも政策の方向性自体に違いがあるなど、どこに投票していいのか悩ましい選挙になる。
▶各党の公約を眺めていて改めて感じるのは、小選挙区制のもたらす弊害だ。政策に少なからず違いがあっても、政権交代というスローガンや原発問題といった大きな政策が一致すれば、選挙のために取り敢えず連携する。また、憲法改正を巡っては与党内で溝がある一方、自民と希望・維新はほぼ軌を一にするなど、まさにカオスだ。
▶小選挙区制ではしばしば分かりやすい争点を巡る“ワンイシュー選挙”が展開される。しかし1つでも明確な政策上の争点があればまだいいだろう。今回の争点は安倍政権を支持するか否かに絞られている。それほど遠くない過去に我々は同じような経験をしている。政権交代を訴え続けて旧民主党が政権を奪取した、2009年の総選挙だ。
▶今回の分裂騒動からもわかるように、旧民主党が抱えていた問題の1つは、小選挙区制で選挙協力するために野合した寄せ集めだったことだ。一方の自民党も前回14年総選挙の小選挙区での得票率は25%弱にとどまっており、国民から圧倒的な支持を得ているわけではない。
▶中選挙区制は“55年体制”の下、派閥の隆盛や金権政治の蔓延を招き、廃止に至った。しかし国民の政治に対する監視意識が高まり、SNSなどこれだけ情報化が進んだ社会では、こうした懸念は薄れてきているのではないか。中選挙区制にも課題はあり一概に優劣は論じられないが、現在の小選挙区制に改革が必要なことは確かだろう。