2018年度診療報酬改定では、ICTを活用した“遠隔医療”の評価拡大が決まっている。そこで、福岡市と福岡市医師会、医療法人鉄祐会が取り組む実証事業を紹介し、遠隔診療の可能性と課題について考えたい。
福岡市のケースの特徴は、同市の「かかりつけ医」機能強化事業として行われている点にある。ICTを活用し、かかりつけ医が継続的に患者の状況を把握することで、患者と協働して治療・療養に向き合える関係を構築していくことを目指す。福岡市では、定義が広く明確でない遠隔診療という言葉ではなく、“オンライン診療”と位置づけている。現在、市内の21の医療機関が参加している。
福岡市医師会の長柄均会長(写真)は実証事業に参画した理由について、「これからは都市部で通院できなくなる独居高齢者が急増する。在宅医が十分に確保できない中で、こうした患者に必要な医療を提供し、生活を支えていくにはかかりつけ医機能を強化する必要がある。対面診療が原則であることには違いないが、ICTを活用したオンライン診療の発想を取り込んでいく以外に方法がない。より使いやすいものを作り上げていきたいという気持ちで、市からの提案に乗った」と説明する。「やるからには全国に先駆けて、対面診療との適切な組み合わせなどオンライン診療のあるべき姿について、提案・発信していく」との意気込みだ。
福岡市のオンライン診療は、①対面診療による初診で患者の状態を確認し、治療計画を作成、合意、②再診以降は、オンラインで定期受診(ビデオチャット)、③必要に応じて薬を処方、④検査など対面診療の必要性が判断された際は通院を促す―といった形で提供される。患者の状態が変化した場合には、定期受診にかかわらず、担当医に相談できる。
機能としては、「オンラインモニタリング」「オンライン問診」「オンライン診察」に区分。診療に用いるオンラインシステムの画面は、図1のようなイメージになる。
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