厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」は29日、4月からスタートする新専門医制度における専攻医の採用状況を巡り議論した。構成員からは、大学医局の復権を懸念する声が上がった。
新専門医制度の運用細則では、専攻医が都市部に集中しないよう、5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)については、外科、産婦人科、病理、臨床検査を除く14基本領域の採用数に「過去5年の採用実績の平均値を超えない」との上限規定を設けている。
この日、日本専門医機構の松原謙二副理事長は、専攻医の一次・二次登録の採用者数が8342人となり、5都府県でも規定の範囲内に調整することができたと報告。その一方で、東京都の採用者数が多くなったことについては、専攻医が登録した基幹施設の所在地で採用者数を表しており、実際の研修では地方の関連施設をローテートすることなどを説明した。
この説明に対し、立谷秀清構成員(相馬市長)は「大学医局の復権だ」と問題視。「基幹病院に集めて(地方に)派遣するからいいという考え方が地方の医療を救うのか、きわめて疑問」と指摘し、改善を要請した。松原氏は「本来は専攻医がどこへ(研修に)行くか分かる仕組みにすべき」と応じ、現在、各領域学会に専攻医の研修場所に関する資料を提出するよう要請していることを明らかにした。
また渋谷健司構成員(東大)は、14基本領域学会がどのようなデータに基づき5都府県で調整を行ったのか明らかにするよう求め、松原氏がこれを了承した。